運動の視知覚

運動の視知覚

仮現運動

 踏切の警報機がなるときに点滅する2つ並んだ赤色の警告灯は、点滅のタイミングが異なっているだけなのですが、灯りが一方からもう一方へと移動しているように見えます。このように、対象A,Bを適切な時間間隔をおいて、異なる地点に交互に呈示するときに知覚される対象の運動を仮現運動といいます。この現象はβ運動とも呼ばれます。刺激を呈示する間隔の時間の長さによって知覚のされ方は異なり、約30ミリ秒以下では2光点の同時点滅が知覚され、運動は知覚されません。また、約200ミリ秒以上では、2光点の継時的な点滅が知覚され、運動は知覚されません。約60ミリ秒で2光点間のスムーズな動きが知覚できますが、このときに得られる滑らかで鮮やかな運動印象を特に、ファイ現象と呼びます。
 他にも、幾何学的錯視図形の、例えばミュラー-リヤー図形で、主線の両端の矢羽を内向きと外向きに交互に呈示すると、矢羽のβ運動とともに、物理的には等しい主線の長さに滑らかな伸縮運動が知覚されますが、この仮現運動の一種をα運動といいます。さらに、第一の刺激対象を黒地に白、第二の刺激対象を白地に黒として、両対象を交互に呈示すると、第一から第二へのβ運動だけでなく、黒から白へ、白から黒への色の質的変化を伴う運動が知覚され、これをε(イプシロン)運動といいます。

誘導運動、運動残効、自動運動

 仮現運動は、上記のようなもののほかに、広義には物理的運動が存在しないにも関わらず知覚される運動も含みます。夜空を見上げた時に、ゆっくりと流れる雲に着きが囲まれている状況では、月が動いて見えます。他にも電車に乗っているときに、窓から見える向かいの電車が動き出したにも関わらず、自分の乗っている電車が動き出したように感じることもあります。客観的に動いている物と静止しているものがある時、静止している物に対して知覚的に動きを感じることがあり、誘導運動と呼ばれます。
 また、滝の落下を2~3分間持続視してから、周囲の景色に目をやると、景色が一斉に上昇して感じられます。一定方向に一様に移動している外界の対象を、眼を動かさないで見続けた直後は、客観的には動いているはずのない対象が動いて見えます。この現象を運動残効と言います。一方向に回転している渦巻をしばらく見た後、渦巻の回転を止めると逆方向に運動が起こったりもします。

運動残効

 他にも、暗闇の中1個の静止している光点を注視し続けると、その光点が色々な方向に不規則に動いて見え、この現象を自動運動と呼びます。

参考文献

  • 松田隆夫 1995 視知覚 培風館
  • 無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治 2018 心理学新版 有斐閣
  • 中島義明・安藤清志・子安増生・坂野雄二・繁桝算男・立花政夫・箱田裕司(編) 1999 心理学辞典 有斐閣
スポンサーリンク
cottonをフォローする
公認心理学-公認心理師試験合格のための心理学-