児童期は、一般に小学校入学前後から思春期までの時期をさし、年齢的には6,7歳から11、12歳までの子どもであると見なされます。
この間に、子どもの生活は学校を中心として拡大していきます。
心の理論
アメリカの動物心理学者プレマックとウッドラフ(Premack,D.& Woodruff,G.)は、チンパンジーなどの霊長類の動物が、あざむきのように、他の仲間の心の状態を観察しているかのような行動をとることに注目し、これを「心の理論」と呼ぶことを提唱しました。
そして、プレマックにはじまった心の理論をめぐる研究を受けて、ヴィマーとパーナー(Wimmer,H.& Perner,J.)は、誤った信念課題を用いて幼児期の「心の理論」の発達過程を調べる研究をおこないました。ヴィマーらの誤った信念課題では、はじめに人形劇などによって、マクシという男の子を主人公とする次のようなお話を子どもに聞かせます。
(男の子の人形が現れる;人形の名はマクシであり、彼の母親を待っている)
母親が買い物から帰ってきます。彼女はケーキを作るためにチョコレートを買いました。マクシは母親が買ったものを取り出す手伝いをします。
マクシは母親に「チョコレートはどこに置けばいい?」と尋ねました。母親はそれに「青色の箱に入れて」と答えました(高い位置に、青色、緑色、赤色の箱がある)。「ちょっと待って、あなたじゃ届かないから持ち上げてあげる」。母親はマクシを持ち上げます。マクシは青色の箱の中にチョコレートを入れました(オモチャのチョコレートが青色の箱の中に入れられる)。マクシはチョコレートがどこにあるかしっかりと覚えています。だって、彼はチョコレートが大好きで、後で戻ってきて食べるつもりなのですから。そして、彼は公園に遊びに行きました(マクシの人形がいなくなる)。
母親はケーキ作りの準備をはじめて、青色の箱からチョコレートを取り出します。そして、ほんのちょっとだけ生地に入れて、青色でなく緑色の箱にチョコレートを戻します(オモチャのチョコレートが、青色から緑色の箱に移される)。それから、母親は卵を買い忘れた事に気づき、お隣さんにわけてもらうために外にでました。
そこに、マクシが公園からお腹を空かせて戻ってきました。マクシはチョコレートを食べたいのです(マクシの人形があらわれる)。彼はどこにチョコレートを入れたかをちゃんと覚えています。
マクシはチョコレートのためにどこを探すでしょうか?
この時、子どもが正しく青の戸棚を選ぶと、マクシの“誤った信念”を正しく推測することができたということになります。この誤った信念課題に対して、4-7歳にかけて正答率が上昇するというデータが得られ、「心の理論」は、幼児期の終わりから児童期のはじめにかけて成立するとされています。
その後、誤った信念課題による心の理論の研究は自閉症の研究でも開始されました。自閉症児ではこの課題に失敗しやすいということが言われています。
<参考文献>
- 子安増生・二宮克美(編) 2004 キーワードコレクション 発達心理学[改訂版] 新曜社
- 子安増男・木下孝司 1997〈心の理論〉研究の展望 心理学研究68(1)p51-67
- Premack,D.,& Woodruff,G. 1978 Does the chimpanzee have a theory of mind?
Behavioral and Brain Sciences, 1, 512-526. - Wimmer,H.,& Perner,J. 1983 Beliefs about beliefs: Representation and constraining function of wrong beliefs in young children’s understanding of deception. Cognition, 13(1), 103-128.