青年期

青年期

 青年期は、人間の発達段階のうえで児童期と成人期の間に位置する、子どもから大人への移行期です。身体面では第二の発育のスパートと第二次性徴が、知的な面では形式的操作やメタ認知が、情緒面ではその強烈さと不安定さがみられるようになります(中島他 1999)。

 このような生物学的な変化を背景に、心理面では自立を巡った動きが生じてきます。Blos,P(1985)は、外的対象からの相対的な独立を遂げる幼児期と比較して、青年期は、内在化された幼児期対象からの独立をめざすとしています。青年期前期頃に生じる、親からの心理的自立の試み、あるいは情緒的自律性の獲得を、心理的離乳といいます(中島他 1999)。

 心身両面において大きな変化の時期である青年期は、アイデンティティの確立がテーマとなります。アイデンティティとは、Erikson,E.H.の人格発達理論における青年期の心理社会的危機を示す用語です(中島 1999)。Marcia,J.E(1966.)は、危機の経験と、職業とイデオロギーへの積極的関与の状態からアイデンティティの状態を4つに区分しました。危機を経験し、職業などへの積極的関与がある状態はアイデンティティが達成された状態です。危機を現在経験しており、職業などへの積極的関与があいまいな状態はモラトリアムと称されます。また、危機を経験していない中で職業などへの積極的な関与があるものはフォアクロージャー、危機を経験したしていないに関わらず職業への積極的関与がない状態がアイデンティティ拡散とされます。

 青年期には一個人内の変化の他にも、対人面でも変化が見られます。Sullivan,H.S(1953)は、児童期には誰にでも向かう一般的な関心によって自分のような仲間を求めていたものが、続く前思春期においては、水入らずの相手や、大の親友(chum)といったものになる同性の特定の人に対して関心が向くようになるとしました。

 また、青年期と精神疾患との関係について、統合失調症の多くは10代後半から30代までに発症するとされており(白石 2005)、うつ病は20代~30代が多いことがわかってきています(下山 2012)。また、摂食障害は思春期、青年期の女性に比較的多いとされています(子安・二宮 2004)。

関連問題

●2022年-問14 ●2019年-問19 ●2018年(追加試験)-問111

引用・参考文献

  • Blos,P.(著) 1985 Son and Fater : before and beyond the oedipus complex FreePr 児玉憲典(訳) 1990 息子と父親 誠信書房
  • 子安増生・二宮克美(編) 2004 キーワードコレクション 発達心理学[改訂版] 新曜社
  • Marcia,J.E 1966 development and validety of ego-identitiy status Journal of Personality and Social Psychology3,531-538.
  • 中島義明・安藤清志・子安増生・坂野雄二・繁桝算男・立花政夫・箱田裕司(編) 1999 心理学辞典 有斐閣
  • 下山晴彦・中嶋義文 2012 家族のためのよくわかるうつ 池田書店
  • 白石弘巳 2005 家族のための統合失調症入門 河出書房新社
  • Sullivan,H.S. 1953 The interpersonal theory of psychiatry the william alandon white psychiatric foundation w.w. norton & company, Inc., New York 中井久夫 宮崎隆吉 高木敬三 鑪幹八郎(共訳) 1990 精神医学は対人関係論である みすず書房