法規に関する基礎知識
法規のヒエラルキー
日本の法的な規則は、1947年に施行された『日本国憲法』を頂点とする、効力の階層構造を持っています。
憲法は、国民が定める国の最高法規で、国民が権力を持つ者に向けたルールです。国民は、法律を作ることは国会に任せていますが、憲法については任せていません。憲法に反しない範囲で法律が作られることになります。
一口に法律というと様々な決まり事を含むことがありますが、正確には、国会を通じて成立した法案のことを『法律』と呼びます。
そして、国会が制定した法律の範囲内で、法律の執行その他の政策遂行のために内閣を頂点とする行政機関が定める制定法の形式を総称して命令と呼びます。命令は、その制定者によって形式が多岐にわたります。
特に、法律の制定を受けて内閣が定めたものを『政令』と呼びます。例えば、~法施行令といったものは、~法を施行するための政令という意味の政令です。
政令よりも細かい内容を各担当大臣が定めたものは『省令』と呼びます。
専門性や政治的中立性を確保する必要性から、内閣府とは別に置かれる外局である庁の長官などが制定したものを『外局規則』と呼びます。
また、自治体の法令には、『条例』と『規則』があります。
このように、主権を持つ国民によって憲法が規定されており、その範囲内で立法機関の国会が法律を制定し、さらにそれを受けて内閣をはじめとした行政機関が命令を制定していきます。ヒエラルキーの上位のものほど優先されますが、規定されている内容は抽象的になっているため、ヒエラルキーの下位のもので詳細を規定していくという構造になっています。
ちなみに、『要綱』や『要領』、『指針』、『ガイドライン』などは、基準やマニュアルの事であり、法令ではありません。
また、条約は、国家間あるいは国際機関と国家との間の法的合意のことを差し、その優先性の位置づけにはいくつかの考え方があるため、ここではあえてヒエラルキーには含めていません。
法律の構造
公認心理師法を見てみると、まず「公認心理師法」という名前があるように、法律では、はじめに『法律名』が記載されています。
その次に『目次』があり、そこで公認心理師法には「第一章 総則」「第二章 試験」といった記述があるように『章名』が記載されます。
さらに各章を見ていくと、総則では「(目的)」と『見出し』があり、それに続いて「第一条 この法律は、公認心理師の資格を定めて、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とする。」といった『条』が記載されます。そして、条の内容をさらに区切る必要があるときには『項』がおかれます。1項には数字がつけられていませんが、条に続いて記載されている文章は1項となります。さらに、条や項の中で事柄を列記したいときには、『号』が使われます。
法律を改正する場合には、改正法によって改正がなされます。改正法附則には、その法律の改正情報が載っているため、その法律がどういう経緯をたどって現在にいたっているかがわかるようになっています。
参考文献
- 岩隈道洋 2012 研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門 第1回 法情報の世界 情報管理 55(7), 511-515
- 吉田利宏 2012 研究・実務に役立つ!リーガル・リサーチ入門 第2回 法体系 情報管理 55(8), 591-595
- 吉田利宏 2016 元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術[改定第3版] ダイアモンド社