類型論

目次
クレッチマーの類型論
シェルドンの類型論
ユングの類型論
シュプランガーの類型論
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一定の原理に基づいて普遍的な類型を設定し、それによって性格の理解を容易にしようとする立場のことを性格類型論と呼びます。身近なところでいえば、血液型占いでは「A型は真面目で几帳面で堅実的」といった具合に、血液型に典型的な傾向があるとしています。ちなみに、血液型とパーソナリティとの関連については、心理学的な妥当性はないとされています。このような類型を基に性格を理解しようとするものが類型論です。血液型占いでは血液型を類型の基礎としていますが、心理学では、体質や生物学的な特性を基礎として類型を設定したり、心理学的な特性を基礎として類型を設定したりする立場があります。
類型論は、一定の理論的背景の上に構成され、典型例が明示されているために、性格を直観的・全体的に把握するのに便利ですが、少数の型に分類する時に中間型や移行型が無視されやすく、また性格を固定的に考えやすいという欠点もあります。
類型論と比べられるものに特性論がありますが、特性論では類型から性格を捉えようとするのではなく、特性の組み合わせから性格を捉えようとしています。

クレッチマーの類型論

クレッチマー(Kretschmer,E.)は、精神病患者の臨床観察をもとに、患者を、開放的で周囲の状況によく適応し、人間らしい暖かみ、子どものような無邪気さをもつ循環気質、非社交的、内気、きまじめ、利己的、空想的な分裂気質、粘り強く、几帳面で秩序を好み、重々しく融通が利かない粘着気質の3つの類型に分類しました。各々の気質では、その他にもいくつかの項目において比較することができ、気質と親和性のある体格も検討されています。循環気質は肥満型、分裂気質は細身型、粘着気質は筋骨たくましい闘士型の体格と親和性があるとされます。

シェルドンの類型論

シェルドン(Sheldon,W.H.)は、男子学生約4000人の身体部位を測定し、クレッチマーの類型論を、統計処理を用いて洗練しました。シェルドンは、消化管を形成する内胚葉、筋肉や骨格を形成する中胚葉、皮膚やツメなどを形成する外胚葉との関連性から、体型を内胚葉型(太っている)、中胚葉型(筋肉が発達している)、外胚葉型(細い)に分類しました。そして、それぞれ内臓緊張(社交的、リラックスしている)、身体緊張(精力的、競争的)、頭脳緊張(引っ込み思案、抑制されている)の3器質と対応があるとしました。

ユングの類型論

ユング(Jung,C.G.)は、心的エネルギーの向かう方向によって、内向型と外向型という2類型を区別しました。心的エネルギーが外向き、すなわち他者や物など客体に向けられていることを外向とよび、リビドーが内向き、自分自身の意識経験に向けられていることを内向と呼びます。これら心的エネルギーの向きは根本的態度されます。
それに加えて、原則的に不変な心的活動を“機能”として、“直感”と“感覚”、“思考”と“感情”、という4つの根本的機能を区別しました。このうち、“直観”と“感覚”は理性が及ばないという意味で非合理的機能、“思考”と“感情”は理性にかなったものという意味で合理的機能とされます。また、非合理的機能と合理的機能に各々分類されている2つの機能(直感-感覚、思考‐感情)は、対極に位置づけられる、個々に独立した機能であるとされます。
これは、物事への働きかけ方を、思考優位か(思考・直感)、感情優位か(感情・感覚)を両極としたものとして捉え、理性が伴っている程度によって非合理的機能(直感-感覚)と合理的機能(思考‐感情)の2つの水準に分けたものです。つまり、理性が伴う思考は“思考”、理性が及ばない思考は“直感”、理性が伴う感情は“感情”、理性が及ばない感情は“感覚”と表現されています。非合理的機能である感覚と直感とに目を向けると、感覚は意識的知覚であり、直観は無意識的知覚であるという特徴もあります。
例えば、目の前に現れた出来事を理解しようと能動的に活動する時には、思考や感情といった機能が本領を発揮します。しかし、出来事を理解しようとある部分に目を向けた時には、否応なしに目を向けていない部分が出てきてしまい、出来事全体を知覚することはできなくなってしまいます。基本的に思考や感情といった合理的機能は、枠組という制限があってこそはじめて働くものであり、感覚や直感といった非合理的機能は、目の前の出来事そのものを絶対的、全体的に知覚することを本領とする心理機能です。感覚と直感は、合理的機能である思考や感情が生まれてくる母体でもあります。

シュプランガー

シュプランガー(Spranger,E.)は、人生における価値の置き方に焦点をあてた類型を提唱しました。真理の探究に最大の価値をおく「理論型」は、物事を客観的に扱い、筋を通して理論的に考えようとします。物事を損得で考える傾向が強い「経済型」は、何をするにも功利的で効率を考えて行動します。美的なものに魅かれ美の探求に価値をおく「芸術型」は、繊細な感情をもち物事を感情的にとらえる傾向があります。人を支配することに喜びを感じる傾向がある「権力型」は権力を持つことや人を説得することに関心が強いとされます。聖なるものや清らかなるものを求め生きがいにしている「宗教型・社会型」は、人を愛することや誰かのやくに立つことに喜びを見いだします。

<参考文献>

  • C.G.Jung(著)林道義(訳) 1987  タイプ論  みすず書房
  • Kretschmer,E.(著)相場均(訳) 1960 体格と性格 文光堂
  • 無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治 2018 心理学新版 有斐閣
  • 中島義明・安藤清志・子安増生・坂野雄二・繁桝算男・立花政夫・箱田裕司(編) 1999 心理学辞典 有斐閣
  • 詫摩武俊(編著) 1978 性格の理論 誠信書房
  • フロイトやユング、クレッチマーやレヴィン、オールポートといったパーソナリティ理論の提唱者ごとに、その人物の生涯とあわせて理論がまとめられています。

  • 詫摩武俊(監修) 1998 性格心理学ハンドブック 福村出版
  • 性格について、その基礎理論をはじめとして、ライフステージという視点からや、環境という視点などから多角的にまとめられています。

関連問題

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  1. 類型論
  2. 特性論