レスポンデント条件づけ

 私たちの行動は大きく、生得性の行動と学習性の行動に分けることができます。生得性の行動は、その個体が遺伝的な資質に基づいて、誕生とともにあらかじめ持っていた行動です。学習性の行動は、条件づけという手続きを経験することで新たに生成される行動です。そして、学習性の行動はレスポンデント条件づけとオペラント条件づけに分けられます。各々についてみていきます。

生得性行動

 生得性行動には、馴化や鋭敏化があります。馴化や鋭敏化は、何度も刺激を呈示したり、刺激にさらしたりすることで観察される現象です。例えば、騒音に次第に反応しなくなるような現象は馴化であり、気にならなかった音に次第に反応していくようになる現象が鋭敏化です。

 これらは、条件づけと同じく行動変容が生じるものの、条件づけとはやや異なるものです。条件づけによって生成される学習性行動の行動変容では、随伴性操作を通じて、単なる反応の頻度の増減だけでなく、これまでの刺激や反応が新しい機能を獲得したり機能が変化したりすることが観察されます。一方で、馴化や鋭敏化としての行動変容は、特定の単一刺激の繰り返しのもとでの反応の減少と増加にすぎないと考えられ、これらの点で異なるとされています。

学習性行動

 行動の学習は、環境と行動の相互作用で進みます。私たちは、環境の中に生きています。そして環境からの刺激を受けて反応します。例えば、梅干しが口に入れば唾液がでます。また、私たちの反応の後に環境が変化し、その結果によって、それ以降反応が増えたり減ったりします。例えば、食卓につくとすぐにおいしい食事が食べられたとすれば、それ以降また食事をしたいときには食卓につくようになるでしょう。

 環境と生体の相互作用を考えたときに、環境の変化には3種類あります。1つ目は、行動のきっかけとなる環境変化です。上記の例でいえば梅干しが口に入ることがこれにあたるでしょう。梅干しが口に入れば唾液が出てきます。2つ目は、行動の後に生じる環境変化です。これは食卓についた後に食事が出てきたことです。そして、これがおいしければまた食卓につくという行動の頻度はあがるでしょう。3つ目は、生体時の状態を変える環境変化です。1,2のような行動の前後で明確に起きる環境の変化するというよりも、前提としてすでに起きている環境の変化といったイメージです。例えば、食事を1度抜いている状態と、お菓子をたらふく食べている状態を考えてもらえば、食卓につく行動がそれぞれの状態でかわってくることはイメージに難くないと思います。1つ目と3つ目の環境の変化は行動よりも前の出来事なので先行事象、2つ目の環境変化は行動の後に生じるので後続事象に分類されます。このような、先行刺激→行動→後続事象という環境と生体の相互作用が、学習性行動と大きな関連があるのです。

レスポンデント条件づけ

 私たちは個々に、刺激が提示された際に必ず生じる類の反応があります。例えば、口腔内の化学物質などの刺激は、脳によって知覚され、唾液の分泌を促します。この場合の、口腔内の刺激のように、不随意的にある反応を誘発させる刺激を無条件刺激と呼びます。そして、口腔内の刺激によって引き起こされる唾液のように、無条件刺激の提示によって無条件に生じる反応を無条件反応と呼びます。通常、当然ですがメトロノームの音を聞いたとしても、唾液は分泌されません。このような場合、メトロノームは唾液の分泌という反応を促さないため、中性刺激と呼ばれます。

 しかし、ロシアの生理学者パブロフ(Pavlov,I.P.)の、犬を被験体とした実験では、犬がメトロノームの音を聞くことで唾液が出るようになりました。パブロフは、“メトロノームの音と”いう刺激に対して、もともとは生じない唾液という反応が生じるように試みたわけですが、このように、そもそも生じない反応を生じさせようという対象になる刺激を条件刺激と呼びます。基本的に条件刺激に用いられる刺激は中性刺激である必要があります。
 パブロフの実験の方法は、メトロノームの音と餌をほぼ同時に提示することでした。無条件刺激と、条件刺激をほぼ同時に提示することを対提示と呼びます。そして、メトロノームの音と餌の対提示を繰り返しました。そうすると、犬は、メトロノームの音を聞いただけで、唾液が分泌されるようになったのです。ここでいう“唾液の分泌”は、条件刺激によって当初は認められなかった反応が生じるようになった状態ですが、今、条件刺激の提示によって生じるようになりました。条件刺激によって生じる反応を条件反応と呼びます。
 そして、このように条件刺激と無条件刺激を対提示することによって、条件反応を形成するものをレスポンデント条件づけといいます。

強化、般化、消去

 レスポンデント条件づけでは、条件刺激と無条件刺激を対提示する操作を強化とも呼びます。条件刺激に対する無条件刺激提示のタイミングによって、様々な条件づけの種類があります。無条件刺激と条件刺激を同時に提示する同時条件づけ、条件刺激を先に提示しその後に無条件刺激を提示する痕跡条件づけ、逆に無条件刺激を先に提示しその後に条件刺激を提示する逆行条件づけなどがあります。一般的に、条件刺激が無条件刺激の予告信号になるほど条件づけられやすいと言われています。つまり、痕跡条件づけ、同時条件付け、逆行条件付けの順で条件づけられやすいということです。

 また、これらのように条件刺激が1つの刺激の場合だけでなく、複数の刺激から構成されているような場合にも、様々な現象が明らかになっています。

 例えば、事前に「ネコ」と「鈴」の対提示をおこない、次に「ネコ」さけと無条件刺激とで条件づけをおこなった場合、「鈴」でも条件反応が現れるようになります。これを感性予備条件づけといいます。また、これとは逆の順序で、最初に「ネコ」と無条件刺激の条件づけをおこない、次に「ネコ」と「鈴」の対提示を反復すると、「鈴」でも条件反応が現れるようになり、これを高次(二次)条件づけと呼びます。

 条件づけをおこなうと、条件刺激となった刺激以外にも、条件刺激と似た特徴を持つ刺激が、条件刺激と同じ機能を持つようになることがあります。例えば、犬に対して1000サイクルのメトロノームの音を条件刺激として条件づけをおこなった場合、1500サイクルのメトロノームの音であっても、唾液が分泌されるようになります。これを般化と言います。

 また、条件刺激のみの提示が続くと、やがて条件反応は起こらなくなり、これを消去と言います。

 このようにレスポンデント条件づけは、無条件刺激を引き起こす無条件刺激と中性刺激の対提示という観点からとらえられていました。しかし、レスポンデント条件づけは、無条件反応がなくても生じることが知られています。例えば、チョコレートが大好きでチョコレートをいつも食べている友人がいた場合、チョコレートを見ると友人の顔が浮かんでくるようなこともあるでしょう。こういったことから、レスポンデント条件づけは、条件刺激と無条件刺激を対提示することによって条件反応を形成するものというよりも、2つの刺激を時間的に前後させて提示する手続きであると考えられています。

引用・参考文献

  • 小野浩一 2005 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館
  • 坂上貴之・井上雅彦 2018 行動分析学-行動の科学的理解をめざして 有斐閣アルマ
  • 宮下照子・免田賢 2007 新行動療法入門 ナカニシヤ出版
  • 無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治 2018 心理学新版 有斐閣
  • 中島義明・安藤清志・子安増生・坂野雄二・繁桝算男・立花政夫・箱田裕司(編) 1999 心理学辞典 有斐閣

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