記銘

記銘

クレイクとロックハートの処理水準モデル

 記憶とは過去経験を保持し、後にそれを再現して利用する機能で、符号化(記銘)、貯蔵(保持)、検索(想起)の3段階からなります。このうち符号化とは、入力された刺激を記憶表象に変換し、貯蔵するまでの過程をさします。つまり、符号化では、入力された刺激の物理的特徴の検出や分類などの知覚的処理をおこない記憶表象を形成する過程から、より強固な記憶表象を形成するためにおこなわれる、より意図的な過程までが想定されています。記銘は、符号化とほぼ同じ意味で使われますが、「符号化方略」とは表現せずに「記銘方略」と表現するように、その、特に意図的な過程を指すことが多い用語です。
 クレイクとロックハート(Craik,F.I.M.&Lockhart,R.S.)は、記憶は、情報を「深く」処理するほど情報が長期間蓄えられるとする処理水準モデルを提出しました。短期記憶の貯蔵時間は限られているため、入力された情報は何もしないと失われてしまいます。そのため、記憶を保持するためにさまざまな方法が用いられます。短期記憶内に貯蔵された情報を、意図的または無意図的に、何回も反復して想起することをリハーサルといい、短期記憶のなかに情報を留めておくための情報の単純なくり返しである維持リハーサルと、体制化などによって情報を効果的に短期記憶から長期記憶へと転送するための精緻化リハーサルに分けられます。この精緻化リハーサルが、クレイクとロックハートのいう「深い」処理に相当するものです。

精緻化

 符号化における精緻化は、体制化によって記憶学習などを促進させる働きをもちます。記憶の体制化とは、関連する情報をまとめ、整理して覚える方略のことで、体制化によって情報を体系づければ、より多くの情報を効率的に記銘できるだけでなく、ある情報を思い出せばそれと関連のある他の情報も自然と思い出すことができるので、検索の際の負担も少なくなると考えられています。体制化の他にも、関連のある項目がまとまるカテゴリー的群化や、自分の知っている場所や道筋のイメージを浮かべた後に続けてその中の目立つ場所に覚えるべき項目を一つずつ置いたイメージを形成する場所法、各単語の単語リストのイメージを作るというイメージ化法なども精緻化的符号化の一つです。

参考文献

  • 無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治 2018 心理学新版 有斐閣
  • 中島義明・安藤清志・子安増生・坂野雄二・繁桝算男・立花政夫・箱田裕司(編) 1999 心理学辞典 有斐閣