刺激の体感

目次と関連問題

▽感覚時間、順応、残留感覚
▽知覚の恒常性

▽感覚時間、順応、残留感覚

感覚器官に閾上の刺激が与えられてから、その感覚が生起するまでには、ミリ秒単位ではありますが、時間的な遅れがあります。この遅れのことを感覚時間といいます。
その後、感覚器官が一定の刺激状況に持続的にさらされていると、時間経過に伴って感覚的体験の強度や質、明瞭さなどが変化します。これを順応と総称します。
そして、感覚受容器に与えられていた刺激が除去されても、直ちに感覚的体験が消失することはありません。このように、感覚を生起させる物理的刺激が客観的に除去された後にも、しばらく感覚的体験が持続することを残留感覚といいます。

▽知覚の恒常性

私たちは、基本的に感覚器官に適した刺激を受け取ることによって感覚が生まれますが、刺激そのものと感覚器で受け取る刺激とは必ずしも同質ではありません。例えば、視覚によって樹木の大きさを知覚しようとするときに、樹木の実際の大きさと眼の網膜上の大きさは異なります。刺激の大もととなっている対象や感覚を生じさせる物理な特性を遠刺激、感覚受容器に到達してそこでなんらかの作用を引き起こす感覚受容器上の刺激を近刺激と言います。上の例で言えば、樹木の実際の大きさが遠刺激、網膜上の樹木の大きさが近刺激です。
樹木から観察する距離が離れれば、その分網膜上の樹木の大きさは小さくなりますが、実感としては、樹木を1m離れたところから見ても、それを2m離れたところから見てもそれほど樹木の大きさの違いを感じません。また、視覚だけでなく聴覚においては、自動車の音を遠くから聞いても近くで聞いても音源の大きさの判断にはほとんど影響がないといったようなことが起こります。このように、一般に感覚受容器に与えられる近刺激が変化しても、大きさ、形、白さ、速度、音の大きさ、重さなど物のさまざまな特徴が比較的恒常に保たれる現象を知覚の恒常性、または恒常現象などと呼びます。知覚は遠刺激によって生じているにも関わらず、近刺激の特性を相対的によく表しているのです。

>形の視知覚