自己認知

自己認知

 人は他者との関係における自己評価において、自分に対する評価を高く維持することが知られています。このことをテッサー(A.Tesser)は、自己評価維持モデルとしてモデル化しました。このモデルは、「他者との関係性は自己評価に重要な影響を与える」と、「人は自己評価を維持・増大するよう行動する」という2つ前提からなります。そして、心理的に近い他者の遂行が優れている場合にはそれを自身にも反映して自己評価が高まり、その遂行が劣っている場合には自分の遂行と比較して自己評価が高まるとされます。どちらの過程が働くかを決定する要因は評価の対象に対する自分にとっての重要度であるとされ、重要度が高い場合には比較が生じ、低い場合には反映が生じると考えられます。

 自己評価には、自身が他者からどう見られているかを自分自身で推理判断するといった性質のものもあります。これと関連する傾向として、行為者が自分にとって目立つと思える行為をしたとき、他社が自分に注目していると過度に思う傾向をスポットライト効果といいます。また、自分の感情や思考などの内側が露わなものとして他者に伝わった、と実際以上にその過程を過度に推測することを透明性錯誤と呼びます(遠藤 2007)。

 別の角度から自己に対する評価や認識について見てみましょう。統合された意識的な自己イメージとしての自己同一性を、アイデンティティといいます。アイデンティティには、集団やカテゴリーに自分が所属しているという認識も含まれていおり、集団とのかかわりや社会的な観点から形成された自己概念を、社会的アイデンティティと呼びます。
 社会的アイデンティティとの関連で、集団間葛藤の生起過程を説明するためにタジフェル(H. Tajfel)らは、社会的アイデンティティ理論を提唱しました。その人が所属し、成員であると認知している集団を内集団、所属してい内集団を外集団と呼びます。内集団における自己の所属性が強く意識される場面では、内集団・外集団間の境界を明確にし、内集団を外集団よりも高く評価することによって望ましい自己評価を行うことができます。こういった集団間の比較過程が、集団間の差や内集団びいきを引き起こします。内集団びいきとは、外集団成員よりも内集団成員に対してより好意的な認知・感情・行動を示す傾向で、内集団バイアスとも呼ばれます。そうして、集団間の偏見や葛藤へと至ると、社会的アイデンティティ理論では説明されます。

関連問題

●2020年-問14問87

引用・参考文献

  • 遠藤 由美 2007 自己紹介場面での緊張と透明性錯覚 実験社会心理学研究46 (1) p. 53-62
  • 池田謙一(他・著) 2010 社会心理学 有斐閣
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