集団効果

集団効果

 私たちの取る行動は、周囲に人がいるかいないかに影響を受ける事があります。例えば、1人で作業をする場合と、皆で一緒に作業をするような場合では、自分の作業の質が変わってくるといった事は誰もが体験した事があるでしょう。
 個人がある課題をおこなう場合に、他者の存在によって課題遂行が促進されることがあります。この現象を社会的促進と呼びます。単に観察者が存在することによって課題遂行が促進される場合と、同一の課題を同時かつ独立に行う他者がいることによって促進される場合とがあり、前者は観察者効果として、後者は共行動効果として知られています。一方で、個人で作業するときの努力量に比べて集団で作業するときの努力量が低下することもあり、この現象を社会的怠惰と呼びます。このように、個人の行動が集団内、あるいは他者の存在状況下では単独の場合とは異なる現象を、集団効果といいます。

 集団の影響は様々にみることができます。友達数人と食事に行く時、自分は和食を食べたいと思っていたけれど、複数の友人が洋食を食べたいといったのでそちらに意見をあわせるといったことは日常で多くあるでしょう。ある集団成員の意見や判断などが他の成員のものと異なっている時、他の成員のそれに合致するように自分の意見や判断などを変化させることを同調と呼びます。
 同調の古典的研究としてはアッシュ(S.E.Asch)によるものが有名です。アッシュの実験では、7人の実験協力者がいる部屋に被検者を通して、三つの比較線分の中から先に示された標準線分と同じ物を選ぶ課題をおこないました。実験協力者が全員正しい回答を述べた後に被験者に正答を選んでもらったり、実験協力者が全員誤った回答を述べた後に被験者に正答を選んでもらったりします。その結果、通常であれば間違える確率が1%以下の課題であっても、実験協力者が故意に誤答を繰り返した場合、被験者が誤った判断をする確率は36.8%にまであがる事が確認されました(S.E.Asch 1955)。
 他者に同調すること、他者を同調させることを社会的影響と呼びます。社会的影響には、情報的影響と規範的影響があることが知られています。情報的影響とは、他者や集団の意見や判断をよりどころにしていて、正しく適切な判断をしたいといった動機づけによるものです。規範的影響とは、他者や集団との関係を維持したい、賞賛を受けたり罰を避けたりしたいといった動機づけによるものです。

 また、援助可能な傍観者の人数が多くなるほど援助行動が起こりにくくなることも知られており、これを傍観者効果と呼びます。この傍観者効果は、アメリカのキティ・ジェノヴェーゼの殺人事件で注目されました。この事件は、女性が襲われていた45分の間に、38人の目撃者がいたにも関わらず誰も警察に連絡をする事なく、最終的に一人の女性が刺殺され亡くなったというものでした。
 この現象を、ダーリー(J. M.Darley)とラタネ(B.Latané)は、実験で再現しました。実験では、被験者である学生に、学生が大学生活にどうやって適応していくか、また、どのような個人的な問題に直面するかの研究であると伝え、研究では、匿名性を保つためにインターホンを通じてやりとりをしてもらう事、インターフォンでは1度に1人ずつしか話ができない事などを説明しました。被験者の学生は、話し相手が1人であると説明されるグループと、相手が2人いると説明されるグループ、相手が5人いると説明されるグループとに振り分けられます。そして、ディスカッションの最中、インターホン越しに参加者の1人がてんかん発作様の症状で苦しみだします。この発作が起きている間、被験者は他の参加者との連絡をとることや、他の参加者がどんな行動を起こしているかを知ることができない状況で、実験者にどれくらいの早さで緊急事態であることを報告するかを調べました。すると、人数が多いほど援助行動が起きる確率が低く、行動までの時間も遅かったことが確認されました(J.M. Darley & B. Latané 1968)。
 本来、緊急事態における援助行動は、①何かが起こったということに気づき、②それが緊急事態であることを理解し、③自分には援助する責任があると認識し、④適切な介入の仕方を決定し、⑤介入を実行するという流れでおきると考えられています。
 ラタネは傍観者効果が生じて援助行動が抑制される理由の1つとして、冷静にしている他者を見る事でその事態は援助を必要としないと誤って解釈するためということを挙げています。このように、多数者の意見が表明されないために、本来なら集団を代表する意見だったものが抹殺されてしまうことを、多元的無知、または集合的無知と呼びます。

 こういった様々な集団の効果を説明するにあたって、ラタネによって他者がある個人の心理的状態、動機、行動などへ及ぼす影響を定式化したものを社会的インパクト理論といいます。この理論では、他者によるある個人への影響(社会的インパクト;Imp)は、影響源の強度(strength,S;他者の社会的勢力や重要性など)と近接性(immediacy,I;他者と当該の個人との空間的、時間的近さ)と他者の人数(number,N;当該の個人へ影響を与える他者の人数)の相乗関数(I mp=f(S・I・N))として表されます。ラタネは、この理論によって、同調行動や緊急場面の反応の抑制、社会的怠惰などを説明しようとしています。

関連問題

●2018年(追加試験)-問85 ●2019年-問13 ●2021年-問11

引用・参考文献

  • Asch, S.E. 1955 Opinions and social pressure Scientific American, 193, p31-35.
  • Darley, J. M., & Latané, B. 1968 Bystander intervention in emergencies: Diffusion of responsibility. Journal of Personality and Social Psychology, 8, 377–383
  • 池田謙一(他・著) 2010 社会心理学 有斐閣
  • 中島義明(他・編) 1999 心理学辞典 有斐閣
  • 小川一夫(監修) 1995 改定新版 社会心理学用語辞典 北大路書房
  • 齊藤勇(編) 2011 図説 社会心理学入門 誠信書房
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