スーパービジョン
スーパービジョンとは、セラピストが、自分のもつ事例の理解と支援方法の立案、具体的な支援遂行のために受ける個別指導のことです。指導を行う者をスーパーヴァイザー、指導を受ける者をスーパーヴァイジーと呼びます。
特に心理臨床実践の初心者にとって、勉強して頭で理解してきたことと、実践の中で初めて体験することを結び付けて理解し、安定した支援をおこなうことは当然難しいものです。事例の理論的理解と実践的理解を合致させていくうえでも、スーパーヴィジョンは実践活動に不可欠な研修方法です。
スーパービジョンは、あくまで心理臨床の技法を学ぶことが目的とされ、人格の成長や健康度を高めていくことが主たる目的ではありません。スーパーヴァイジーが自信をもってケースに取り組むことができるようになるという点に、スーパーヴィジョンの意味があるとされます。
スーパーヴァイザーとスーパーヴァイジーの関係がうまくいっていないときには、スーパーヴァイジーが自信を失うなどすることで、実際のクライエントとの面接に悪影響が生じることもあります。スーパーヴァイザーとスーパーヴァイジーの関係は、指導者-被指導者の関係ではあるものの、上下関係でなく、相互協力的な関係のもとスーパーヴィジョンがおこなわれることが望ましいとされています。
また、スーパービジョンでは、ケースにおけるセラピスト-クライエント関係と同種の問題がスーパーヴァイザー-スーパーヴァイジー間に起きることが知られており、このことは「スーパーヴィジョンにおける『並行過程』」Ekstein & Wallerstein(1958)と呼ばれます。
スーパーヴィジョンの形式は、スーパーヴァイザーとスーパーヴァイジーが1対1でおこなうもののほかに、複数人のグループでおこなうものもあります。グループ形式でおこなうスーパービジョンを、グループ・スーパービジョンと呼びます。
グループ・スーパービジョンでは、他者の目を気にして防衛的になったり、劣等感が刺激されたりといったことが起こることもありますが、スーパーヴァイージー間での互いの臨床を観察しそこから学ぶことができます。
<参考文献>
- 氏原寛・亀口賢治・成田善弘・東山紘久・山中康裕 2004 心理臨床大事典(改訂版) 培風館
- 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会監修 2008 臨床心理士資格試験問題集1 誠信書房
- 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会監修 2015 臨床心理士資格試験問題集3 誠信書房