秘密保持

秘密保持

 公認心理師法第41条において、「公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない」とあるように、公認心理師には秘密の保持が義務付けられています。語られた内容の秘密が守られるからこそ、支援の場の安全性や生活空間との非連続性が保障され、支援の場として機能するようにもなるといった側面もあるため、基本的にはクライエントの情報はクライエントとの関係性の中だけに収めておく必要があるのです。また、第41条の続きには、「公認心理師でなくなった後においても、同様とする」とあるように、その義務は生涯にわたるものです。

 それだけ重要な秘密保持にも、例外となる状況が以下のように挙げられます。情報を開示する正当な理由となるのは、他害や自傷の恐れがある場合や虐待の可能性がある場合、法的な根拠がある場合、また、本人の同意がある場合などです。

  • 明確で差し迫った生命の危険があり、攻撃される相手が特定されている場合
  • 自殺等、自分自身に対して深刻な危害を加えるおそれのある緊急事態
  • 虐待が疑われる場合
  • そのクライエントのケア等に直接かかわっている専門家同士で話し合う場合
  • 法による定めがある場合
  • 医療保険による支払いが行われる場合
  • クライエントが自分自身の精神状態や心理的な問題に関連する訴えを裁判等によって提起した場合
  • クライエントによる明示的な意思表示がある場合

 他害の可能性がある場合は守秘義務の例外となる、といったことの根拠として有名なのが、アメリカのタラソフ事件です。タラソフ事件とは、大学の医療センターに通所していたポダーという男が、セラピストに対してタチアナ・タラソフという女性を銃で撃つという宣言をし、後日宣言通りの行動をとってタラソフを射殺した事件です。タラソフの両親は、ポダーがタラソフを殺害する可能性がある事を知りながら、タラソフに知らせなかったことについて、セラピストやスーパーバイザーの医師を相手に訴訟を起こしました。この訴えに対して、カリフォルニア最高裁判所は、「患者が人に危険を及ぼすことが予測されたとき、医師やセラピストは、この危険に対処する責務がある。すなわち、治療関係以外の開かれた場所で被害が起こるのであれば、その時点で守秘義務は解除される」としました。このように、虐待を含む他害、自傷といった命に危険が及ぶ可能性のある場合には、守秘義務の例外となります。

 また、本人の同意がある場合は、守秘義務の例外となります。自身の所属する医療チーム内などであれば、クライエントの情報共有の際に必ずしもクライエントの同意は必要ではありませんが、他機関との連携などにあたっては、例え多くの職種が守秘義務を有している医療分野であっても、支援に関わる関係者と情報共有することをクライエントに説明し、同意を得る必要があります。同じように、ケース・カンファレンスやコンサルテーションをはじめ、効果的な援助のために情報共有が必要な場合であっても、開示を強制はせず、その必要性をクライエントが納得できるような形で説明し同意を得ることを心がけます。

 とはいえ、情報の開示の可否に関して境界がはっきりと定められていないことは少なくありません。例えば、児童から「いじめられているけれど、誰にも言わないでほしい」とつげられたような場合には、本人から同意が得られるまで他者と一切情報を共有しないというよりは、本人の意向も踏まえて関係各所と情報を共有しつつ事態が悪化することを防ぐような動きが必要になることもあるでしょう。

 そのため、現場では守秘義務に関して限界があることを早い段階でクライエントに説明して理解を求めたり、第3者に通報する場合には可能な限りクライエントと誰に、何を、どのように伝えるかなどを協議してから伝えるようにしたりといった、秘密の保持と現実的な対処の両立に努め、クライエントの心身両面の安全確保を図ることが重要になります。また、秘密の守秘よりも危機回避を優先させた場合にも、可能な限り事後にクライエントにその旨を説明するといった必要があると考えられています。

関連問題

●2018年-問47問147 ●2021年(追加試験)-問42 ●2019年-問39問126●2020年-問17問78 ●2021年-問3問78

参考文献

  • 池田正俊 2018 法と精神療法:守秘義務など 精神療法44(1)p.36-41
  • 一般財団法人日本心理研修センター(監修) 2018 公認心理師現任者講習会テキスト 金剛出版
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