自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害

歴史

 自閉症の歴史は、1943年にカナー(Kanner,L.)が以下のような一群の独特な特徴を示す子どもたちの症例を報告し、統合失調症の再早期の発病形態の可能性を示唆したところから始まります。

  • 人生初期からの極端な自閉的孤立
  • コミュニケーションの目的で言語を用いることができない
  • 物事をいつまでも同じままにしておこうとする強迫的な欲求
  • 物に対する没入や物を扱う巧緻な能力
  • 良好な(潜在的)認識能力
  • 非器質障害

 カナーは症例を発表した翌年、早期幼児自閉症と呼ぶことを提唱しました。1944年には、アスペルガー(Asperger,H.)が独自の立場から、カナーの症例に似た症例を報告し、自閉的精神病質と呼びました。

  • 眼差しが物や人に向かわず、注意の喚起と生き生きとした接触を示すことがない。
  • 不自然な調子で、滑稽で嘲笑を誘うような言葉がある。
  • 独特の思考と体験様式があり、大人から学ぶことができず、自己流で、関心は狭い視野または小さな断片に限られている。
  • 非常に不器用で、日常生活の基本的習慣が覚えられず、固く滑らかでない運動で、身体図式を持ち合わせいないようにみえ、自分勝手な行動のために集団適応が困難となる。
  • 欲動と感情の起伏に異常な推移があり、人格に調和的に織り込まれておらず、過敏と鈍感が表裏になっている。

 アスペルガーはこれらの特徴が2歳ごろから出現し、一生を通して認められること、ただし、精神分裂病でみられる活発な内的異常体験と進行性の人格解体のないことを強調しました。このアスペルガーの自閉的精神病質の考えは1944年に提出されていたものの、下記にあるように1981年まではあまり注目されませんでした。

 カナーの報告を受けて、自閉症が統合失調症に近隣の障害であるという見解を検討していくにあたって、当時統合失調症をめぐって展開した、個人の病理でなく個人を取り巻く社会的、文化的状況の関数としてとらえようとする発想の影響を受けて、自閉症に対しても心因(環境因)論による理解が中心となります。そして、不安や恐れを取り除き、安心できる場を与えることで人間世界との相互交流が開かれることが期待されていました。しかし、この観点からのアプローチは功を奏さず、また自閉症児におけるてんかん発作が注目されるようになった事などから、脳の何らかの器質障害に基づくものである可能性が考えられるようになります。1968年には、ラター(Rutter,M.)が、カナーの考えを踏まえつつも、自閉症が非器質性障害であるという見解を捨て、発達の障害であるとの見解を提出しました。その後次第に似た病態を示すグループがいくつかあることが明らかになっていき、1980年のアメリカ精神医学界の診断基準DSM-Ⅲで「広汎性発達障害」という上位概念がつくられました。

 このような流れの中で、1981年には、ウィング(Wing,L.)が、自閉症の基準を部分的に満たすものの、言語障害が軽微なグループを、上記アスペルガーの症例を引き合いに出してアスペルガー症候群として取り上げたことで、アスペルガーが自閉的精神病質として記述した病態が再度脚光を浴びることになります。一方で、カナーの症例をもとに、自閉症とされた子ども達のうち、知的に遅れのない子ども達は高機能自閉症とされていきました。このように自閉症をめぐった連続性が明らかなっていき、その後、自閉症はスペクトラムとしてとらえられるようになり、アスペルガー症候群を含む1つの障害単位と考えられるようになりました。

症状

 自閉症スペクトラム障害は、社会的コミュニケーションと、限局された反復的な行動を主とする障害です。社会的コミュニケーションの問題としては、対人距離の異常な近づき方や、興味や感情を共有できないといった情緒的な交流の問題、視線を合わせたり、身振りの使用や理解が難しいといった非言語的コミュニケーションの問題などがあげられます。また、限局された行動としては、おもちゃを一列に並べたり物をたたいたりするような単調な常同運動、柔軟性に欠ける儀式的な習慣などがあげられます。これらの問題は発達早期から存在している必要があります。

 

参考文献

  • 氏原寛(他・編) 1992 心理臨床大事典 培風館
  • 小野次朗(他・編)2010 よくわかる発達障害[第2版] ミネルヴァ書房
  • 髙橋三郎(他監訳) 2014 DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き 医学書院
  • 松下正明(総編) 1998 臨床精神医学講座 第11巻 児童青年期精神障害 中山書店
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