統合失調症

統合失調症

歴史

 統合失調症の病像そのものは、人類の文明とともに存在していたであろうとされるのが大方の見方ではありますが、クレペリン(Kraepelin,E.)が、それまでの研究を「早発性痴呆」の疾患名でまとめたことが1つの節目として挙げられます。クレペリンは、早発性痴呆を内的、身体的疾病過程による精神病としました。

 ブロイラー(Bleuler,E.)は、クレペリンの考えを基礎にして精神分析学を取り入れながら横断面的症状に力点を置き、「精神分裂病」の概念を提唱しました。ブロイラーは、基本症状と副次症状を区別し、4つのA、すなわち

  • 連合弛緩(Assoziationslockerung):思考のまとまりのなさ
  • 両価性(Affekstörung):ある対象について、相反する感情を同時に抱くような矛盾した感情の働き
  • 自閉(Autismus):外界との接触を避け、内界に閉じこもる傾向
  • 感情障害(Ambivalenz):感情鈍麻(外界の出来事だけでなく自身の状態に関しても無関心・冷淡となる)やその逆の異常な敏感さなど

が分裂病に特徴的であるのに対して、妄想や幻覚などは他の精神疾患でもみられることがあるとしました。また、基本症状は生物学的な疾患過程から生じ、副次症状は基本症状に対する自我防衛的反応として解釈しています。

 その後、シュナイダー(Schneider,K.)は、ブロイラーの症状構造論から離れて、自我障害を中心として、

  1. 考想化声:自分自身の考えが声もしくは響きとして聞こえてくること
  2. 話しかけと応答の形の幻聴
  3. 自分の行為に伴って口出しする形の幻聴
  4. 身体への影響体験
  5. 思考奪取やその他思考領域での影響体験
  6. 考想伝播
  7. 妄想知覚
  8. 感情、衝動、意志の領域に現れるその他のさせられ体験、影響体験

の8項目を一級症状として、診断基準の厳格化をおこないました。

 1980年にはクロウ(Crow,T.J.)が、患者ではなく症状の分類を試み、統合失調症二症候仮説を提唱しました。この仮説では、統合失調症の症状を、幻覚、妄想、滅裂思考など、それらの存在が異常であること定義される陽性症状と、感情の平板化、行動の貧困など、それらの欠如が異常であることと定義される陰性症状とに分けて考えます。そして、それぞれに異なる病理過程を想定しました。

 日本では、ブロイラーの提唱したschisopreniaという病名に精神分裂病という訳語を当てていましたが、誤解や偏見を払拭し適切な認識を広める目的で、2002年に統合失調症と病名の変更がなされています。

疫学

 統合失調症は、およそ100人に1人が罹るとされる疾患です。

 発症に関して性差はありませんが、発症年齢や経過については性差があるとされ、発症の最も多い年代は男性で15~25歳、女性で25~35歳といわれます。

病態

 病気の原因について完全には解明されていませんが、生物学的影響と心理社会的影響の両者が複雑に関係すると考えられています。病態モデルの1つとしては、脆弱性を持った人がストレスの存在下で対処機構がうまく作動しない場合に発症するという、脆弱性・ストレス・対処モデルが知られています。

 生物学的要因と関連して、一親等血縁者における発症危険率で比較した場合、統合失調患者の危険率は非統合失調症者に比べて5~10倍以上の高率になることが知られています。加えて、二卵性双生児間の場合に比べて一卵性双生児間の発症の一致率が高く、発病に遺伝素因が大きく関与していると考えられています。

 また、抗精神病薬の薬理作用について検討がなされた結果、抗精神病薬が共通してドーパミン受容体の阻害作用を持つことが確認されたため、統合失調症の精神症状発症には、脳内ドーパミン系の神経伝達異常が関与する可能性が想定されるようになりました。さらに、セロトニンも注目されるようになり、ドーパミンが増えすぎると興奮過敏などを引き起こし、逆にセロトニンが不足すると不安や意欲減退を招くと考えられるようになっています。

症状

 統合失調症の主な症状は、上記のブロイラーの4つのAや、シュナイダーの一級症状などが知られています。DSM-5においては、妄想、幻覚、まとまりのない発語を主として、ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動、陰性症状も診断の際に注目されます。

 幻覚とは、”対象なき知覚”ですが、統合失調症では幻聴の形をとることが多く、幻視はまれです。
 妄想とは、強く確信され、論理的に訂正不能な外的現実に対する誤った思考・判断です。何者かによって危害を加えられたり陥れられるという迫害妄想、直接には関係のないことを自己に関係づける関係妄想、ずっと注目されたり監視されたりしているという注察妄想、食べ物に毒が盛られているという被毒妄想などといった被害妄想や、「自分は救世主である」といった宗教的誇大妄想、皇族や高貴な家の血筋を引くという血統妄想、相手が自分に恋愛感情を抱いていると確信する恋愛妄想などといった誇大妄想などがあります。
 また、緊張病状態でみられる昏迷(意志表出がきわめて乏しくなり、一切の自発的な行動がなくなった状態)は緊張病性昏迷と呼ばれ、緊張病性昏迷では拒絶、硬直、カタレプシーなどの症状をともないます。

 他にも、発病により認知機能が低下することも知られています。

治療

 統合失調症の治療では、生物学的側面に対して薬物療法や電気けいれん療法が、心理社会的側面に対して精神療法やリハビリテーションなどがおこなわれます。

 幻聴や妄想対しては、それを肯定したり否定したりするのではなく、その背後にある気持ちや感情を理解しようと寄り添うように関わります。

 緊張病性昏迷に対しては、隔離・拘束といった措置を余儀なくされることもあります。

関連問題

●2018年-問103 ●2018年(追加試験)-問133 ●2019年-問19 ●2020年-問2問94

参考文献

  • 安宅勝弘・岩間久行・西川徹 2002 精神分裂病 日野原重明・井村裕夫(監修) 看護のための最新医学講座 12 精神疾患 pp.266-284 中山書店
  • 藤野陽生(他) 2018 統合失調症における認知機能障害の推定 精神神経学雑誌120(4)255-261
  • 伊藤順一郎(監修) 2005 統合失調症 正しい理解と治療法 講談社
  • Leff, J. & Vaughn, C. 1985  Expressed Emotion in Families. New York: Guilford Press( レフ・ヴォーン 三野善央・牛島定信(訳) 1991 分裂病と家族の感情表出 金剛出版)
  • 松下正明(総編) 1999 臨床精神医学講座 精神分裂病Ⅰ 中山書店
  • 日本心理教育・家族教室ネットワーク ・ 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)(監修) 2021 統合失調症を知る心理教育テキスト家族版 じょうずな対処 今日から明日へ 学びあい支えあいリカバリー【全改定第1版】 認定NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ
  • 佐藤光源・丹羽真一・井上新平(編) 2007 統合失調症の治療-臨床と基礎- 朝倉書店
  • 高橋三郎・大野裕 2014 DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き 医学書院
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