強迫性障害

強迫性障害

 同一の観念に絶えず関心を奪われるという強迫観念を含む強迫状態は、エスキロール(Esquirol,J.E.D)によって明確にされました。その後、1915年にクレペリン(Kraepelin,E.)が、恐怖状態を含む一連の状態像を指し示す名称として、強迫神経症という概念を提出しました。しかし、クレペリンの提出した強迫神経症では、強迫性障害と恐怖症が本質的には区別されておらず、強迫観念とその他の不安障害は19世紀の終わりまで分けられていませんでしたが、フロイト(Freud,S.)によってそれらが分けられる形で、強迫神経症という概念が再提出されました。

 強迫性障害は、強迫観念と強迫行為によって特徴づけられる精神障害です。強迫観念は無意味ないし不適切、侵入的と判断され、無視や抑制しようとしてもこころから離れない思考や衝動およびイメージなどです。また、強迫行為はおもに強迫観念に伴って高まる不安を緩和および打ち消すための行為で、そのばかばかしさや、過剰であることを自ら認識してやめたいと思いつつも、駆り立てられる様に行う行為です。思い浮かぶ観念の種類や、おこなう行為の種類は多岐にわたります。これら強迫観念や強迫行為により、生活の時間が浪費されていくことが問題となります。

 強迫性障害の主要な治療は、SSRIを主とした薬物、および暴露反応妨害法を中心とした精神療法です。さらに病気自体や治療および対処などについて、患者さんや家族などに十分な理解をうながす心理教育は、治療的動機づけを高めかつ周囲からの一貫した支持を得て安定的治療環境を構築するうえで重要とされています。

引用・参考文献