クライエント中心療法

クライエント中心療法

 クライエント中心療法とは、ロジャーズ(Rogers,C.R.)によって提唱された心理療法です。クライエント中心療法では、建設的なパーソナリティ変化が起こるためには、(1)2人の人が心理的な接触を持っていること。(2)クライエントは、不一致の状態にあり、傷つきやすく、不安な状態にあること。(3)セラピストは、その関係の中で一致しており、統合していること。(4)セラピストは、クライエントに対して無条件の肯定的配慮を経験していること。(5)セラピストは、クライエントの内的照合枠を共感的に理解しており、この経験をクライエントに伝えようと努めていること。(6)セラピストの共感的理解と無条件の肯定的配慮が、最低限クライエントに伝わっていること。が一定の期間継続することが必要であるとします。
 このうち、一致とは、状態を記述するもので、体験に開かれていること、心理的適応といった概念の由来となるものです。体験に開かれていることとは、内的に一致している個人の新しい体験との出会い方であり、心理的適応は、社会的観点から見た一致のことです。また、純粋性や透明性といった用語は、一致から導出される用語であり、一致と同義ではありません。無条件の積極的関心とは、ひとの体験の一つひとつの側面を一貫して受容することで、受容に条件がないことが不可欠の要素となります。共感的理解は、治療者が「あたかも……かのように」という感覚を保ちつつ、クライエントの気づきと体験について正確な理解を体験していることです。共感と同義に使われますが、共感的理解には、共感はあくまで認知過程であるという含みがあります。この共感的理解基づいてコミュニケーションがはかられ、それによってクライエントの体験過程と内的照合枠についての理解が深まっていきます。

 これら、一致や無条件の積極的関心、共感は、単なるスキルや技法レパートリー、パーソナリティ変化が起こるための条件を満たすために一時的に採用できるような何かではありません。クライエント中心療法においては、治療者の行動が6条件のどれかを実現するための通路として役立つかどうかが、有効か無効かを判断する一つの基準となっています。

参考文献

  • 伊東博・村山正治(監訳) 2001 ロジャーズ選集(上)-カウンセラーなら一度は読んでおきたい原潜33論文 誠信書房
  • 岡村達也(監訳) 2008 ロジャーズ辞典 金剛出版
  • 岡村達也 2003 指示的精神療法とロジャーズ 精神療法(29)1 pp.25-32 金剛出版