森田療法
森田療法は、森田正馬によって創始された心理療法です。森田は自分自身の神経症的不安の克服と臨床経験から、1919年に入院森田療法という治療システムを作り上げました。森田は現代でいう神経症を、森田神経質とヒステリーとに大別し、森田神経質を森田療法の対象としました。森田は、森田神経質を、ヒポコンドリー性基調という神経質傾向を持つ者が、何らかの誘因によってそれまで外界に向けていた注意を自身の内界へと向けるようになり、それによって感覚が鋭敏になり意識が狭窄を起こし、さらに注意が内界に向くようになるといった精神交互作用によって生じると考えました。
森田療法では、こうした心理規制に留意して症状に対するとらわれを打破すべく、いくつかの治療の種類が考案されていますが、入院森田療法では、絶対臥褥、軽作業期、重作業期、生活訓練期という4つの段階が設定されています。絶対臥褥期は入院後約1週間続き、その間患者は個室に隔離され、食事、排便以外は絶対臥褥を命じられます。その後の軽作業期では、臥褥時間を短くして、昼間は戸外へ出て、空気と日光に触れるようにします。さらに重作業期では、庭造りや、大工仕事、薪割りといったより重い作業をさせます。そして、生活訓練期では、実生活をおこない、必要に応じて外出をします。症状に対するとらわれを気分本位、作業に専念する態度を目的本位と呼びますが、作業の目的に専念することで、気分本位の状態から抜け出すことを試みるのです。治療の過程では、そのような態度をとるように「不問技法」という指導がなされ、症状へのこだわりをめぐる態度は相手にしません。加えて、日記指導もおこなわれ、日中に感じたこと考えたことを日記にし、それを治療者に渡すと、治療者は患者の思考の中にあるはからい、とらわれの機制を指摘していきます。また、患者の質問に答え、患者に体験発表をさせ、神経症の発生の機制や解放過程を具体的な例を挙げて説明し、患者の理解を深めることを目指した講話という行事もおこなわれます。
その他、森田療法では、集団学習をおこなう「生活の発見会」という支持組織があり、全国的に活動をおこなっています。
参考文献
- 牛島定信 2003 森田療法の歴史的変遷 精神療法29(1)p.61-69
- 北西憲二 2009 創始90周年を迎えた森田療法 臨床精神医学38(3) p.253-263