家族療法

家族療法

 家族療法とは、個人や家族の抱えるさまざまな心理的・行動的な困難や問題を、家族という文脈の中で理解し、解決に向けた援助を行なっていこうとする対人援助方法論の総称です。個人療法の中に精神分析療法や行動療法が位置づけられるように、家族療法の中に、精神分析的家族療法、行動学的家族療法など幾つものモデルがあります。家族療法と記述されると、精神分析療法や行動療法と同じ水準の概念のように感じられますが、それよりは、もう一つ上の水準である個人療法の水準に近い概念です。
 このような広範な概念である家族療法ですが、その歴史的な流れを見てみると、1980年代までシステム論が主要な認識パラダイムがあり、1990年代以降それに社会構成主義のパラダイムが加わっていくという大きな流れがあります。
 システム論とは、そもそも心理学の中だけの理論ではなく、より広く一般科学を対象としたシステムについての理論で、その理論を心理学の中の家族療法に援用したものがシステム論的家族療法です。家族療法におけるシステム論は、ベルタランフィ(von Bertalanffy,L)の理論が原点となっています。家族システムでは、家族の一部の変化が全体に影響する(全体性)、家族銘々のデータを足しても家族は分からない(非総和性)、さまざまな初期状態にあっても最終的に同じ結果が生まれ(等結果性)同じ初期状態からさまざまな結果が生まれる(多結果性)、家族の問題に原因は特定されない(円環的因果律)といったことを前提として家族に関わっていきます。
 社会構成主義とは、現実は社会的過程、すなわち言語的な相互交流の過程の中に構築されるという考え方です。ある人にとっての現実は、同じ状況に置かれた他の人にとっての現実とは異なります。つまり、現実は客観的に存在するのではなく、それを知覚する人の現実としてのみ存在するという性質があります。このように、人はいずれも、ある状況に関する自分なりの解釈を作り出すという考えです。各々が感じている現実は、全て等しく存在しており、それはつまり他の現実となる可能性があるということを意味しています。家族療法の場は、家族が問題として意味づけているものについて会話をすることで治療システムが形成され、問題とされたことを巡る治療的な会話のプロセスの中で問題を解消していくシステムとしてみることができます。そのため、新たな文脈を探り、問題の解消を目指すそれまでとは異なる新たな現実が産みだされるような質問を繰り返し、治療的な会話が継続するように関わっていきます。
 システム論から社会構成主義への転換は、家族全体の在り方が問題であり家族の外側にいる治療者が介入してその在り方を変えていくことが目的になるのだ、という認識から、そもそも問題を前提として話し合う家族と治療者の在り方が問題を問題としているのであって、治療者と家族はその問題とされていることに違った意味を見いだしていくことが目的になるのだ、という認識への変化が要点の一つです。暗黙の前提となっていた「客観性」や「普遍性」、「絶対的な真実」といったものが、実は相対的なものであるということに気づいていくプロセスとして見ていくことができます。
 こういった家族療法全体の大きな流れを踏まえて、家族療法の様々なモデルは、1990年代までを第一世代、1990年代からを第二世代と大きくわけてとらえることができます。第一世代には、多世代伝達モデルや、戦略モデル、ミラノ・システミック・モデルなどが含まれます。第二世代には、ナラティブ・セラピー、リフレクティング・プロセス、ソリューション・フォーカスト・アプローチなどが含まれます。ちなみに、日本では、このナラティブセラピーとリフレクティング・プロセスを包括する広い概念として、ナラティブ・セラピーが用いられる傾向があります。
 家族療法全体としてはこのような変遷がありますが、変遷によってそれまでの理論の価値がなくなってしまうということは無く、例えばシステム論的家族療法の基礎となるシステムの視点は、家族療法における重要で基本的なものであり続けています。

参考文献

  • Andersen,T.(著) 鈴木浩二(監訳)2001 リフレクティング・プロセス 金剛出版
  • Morgan,A.(著) 小森康永・上田牧子(訳) 2003 ナラティブ・セラピーって何? 金剛出版
  • 日本家族研究・家族療法学会(編)2013 家族療法テキストブック 金剛出版
  • 遊佐安一郎 1984 家族療法入門 システムズ・アプローチの理論と実際 星和書房
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