刑事事件
刑事事件の現状
刑法犯の認知件数は、平成8年から毎年戦後最多を更新して平成14年には最高に達しましたが、平成15年以降は減少傾向にあります。刑法犯の罪名で最も多いのは窃盗で、全体の7割程度を占めます。検挙されたものの罪名で最も多いのも窃盗ですが、その割合は全体の5割程度で、暴行、傷害と続きます。
65歳以上の高齢者に焦点をあてると、刑法犯の検挙人員におけるその比率は年々上昇しています。平成30年は21.7%でした。性別を女性に絞ってみると、刑法犯の検挙人員全体に占める高齢者の割合がさらにあがります。平成30年は33.9%でした。上に記したように、刑法犯の検挙人員を罪名で見ていくと窃盗、暴行、傷害が多くを占めていますが、検挙人員の人口に占める比率をみた場合、暴行、傷害は64歳以下の方が多いものの、窃盗に関しては平成16年以降65歳以上の方が多くなっています。これと関連して、高齢入所受刑者の罪名別構成比をみてみると、窃盗が約半分を占め、女性に関しては8割を超えています。平成30年は、89.2%でした(令和元年版 犯罪白書)。
刑事事件の手続き
刑事事件は大きく「捜査」、「裁判」、「執行」の流れに沿って進んでいきます。捜査は検察、裁判は裁判所によっておこなわれます。また、執行は、矯正施設で行われる「施設内処遇」と、施設外、つまり社会の中行われる「社会内処遇」とがあり、施設内処遇は刑務所などが、社会内処遇は保護観察所が中心となっておこなわれます。
施設内処遇から施設外処遇へと移行する際、受刑者の帰住予定地を管轄する保護観察所では、刑事施設から受刑者の身上調査書の送付を受けるなどした後、保護観察官又は保護司が引受人等と面接するなどして帰住予定地の状況を確かめ、住居や就労先等の生活環境を整えて改善更生に適した環境作りを働き掛ける生活環境の調整を実施しています。この結果は仮釈放審理における資料となるほか、受刑者の社会復帰の基礎となります(平成30年版 犯罪白書)。
そして、仮釈放など保護観察を必要とする処遇では、保護観察対象者は、保護観察所へ出向いて保護観察官による⾯接を受けます(保護観察所における保護観察の実状について)。
保護観察官は、一定の地域を包括的に担当しており、担当地域内に居住する者が保護観察となった場合、面接調査、指導等の導入手続を行い、問題点を明らかにして処遇計画を立てます。そして、その保護観察対象者に適した保護司を選んで担当を依頼します。依頼を受けた保護司は、その後定期的に本人と面接しながら、処遇計画に沿って指導・援助を行っていきます(平成16年版 犯罪白書)。
また、ある種の犯罪的傾向を有する保護観察対象者に対しては、指導監督の一環として認知行動療法を理論的基盤とした専門的処遇プログラムが開発されています。専門的処遇プログラムとしては、性犯罪者処遇プログラム、薬物再乱用防止プログラム、暴力防止プログラム及び飲酒運転防止プログラムの4種があり、その処遇を受けることが義務付けられています(令和2年版 犯罪白書)。
関連問題
●2018年(追加試験)-問115 ●2020年-問49 ●2021年-問24
参考文献
- 法務省 刑事事件フローチャート https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji09.html