教育活動

教育活動

学習指導

 全国のどの地域で教育を受けても一定の水準の教育を受けられるようにするために、文部科学省では、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準として、<学習指導要領>を定めています。

 <学習指導要領>では、小学校、中学校、高等学校等ごとに、それぞれの教科等の目標や大まかな教育内容を定めています。またこれとは別に、学校教育法施行規則では標準授業時数等が定められており、各学校では「学習指導要領」や年間の標準授業時数等を踏まえ、地域や学校の実態に応じて教育課程を編成しています。「学習指導要領」は、戦後すぐに試案として作られましたが、昭和33年に現在のような大臣告示の形で定められて以来、ほぼ10年毎に改訂されてきました。

生徒指導

 生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のことです。生徒指導の実践に際して教員間や学校間で教職員の共通理解を図り、組織的・体系的な生徒指導の取組を進めることができるように、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書として、生徒指導の理論・考え方や実際の指導方法等を時代の変化に即して網羅的にまとめたものとして、<生徒指導提要>があります。

 生徒指導は、学校教育法などに基づきおこなわれる学習指導と並んで、学校教育において重要な意義を持つものとされます。学習指導要領には、指導計画の作成などにあたって生徒指導の充実を図ることに配慮するなど、生徒指導に関する規定が置かれています(p.2)。

 生徒指導の進め方については、児童生徒全体への指導と、発達に関する課題や、少年非行など個別の課題を抱える児童生徒への指導をそれぞれ記してあります。問題行動を起こした児童生徒への指導のねらいは、自らの行動を反省し今後の将来に希望や目標を持ち、より充実した学校生活を送ることができるようにすることにあるとされます。問題行動を起こした児童生徒への効果的な指導を進めるにあたっては、問題行動の迅速な事実確認をおこない、問題行動の原因や背景を分析して計画を立て、組織的に指導を行います。指導においては、反省中に基本的な生活習慣や学習の基礎基本を徹底でき、児童生徒自身でどうすればよいか考え、実行し、継続できる内容を盛り込みます。教員は、共感的な態度で指導を行い、児童生徒が、自分を理解してくれる、存在を認めてくれるなど自己存在感を持つよう指導しなければならないとされます(p.168-170)。

 生徒指導の一環として位置づけられるものに、教育相談があります。教育相談は、児童生徒それぞれの発達に即して好ましい人間関係を育て、生活によく適応させ、自己理解を深めさせ、人格の成長への援助を図るものです。生徒指導と教育相談の相違点は、教育相談は主に個に焦点を当てて、面接や演習を通して個の内面の変容を図ろうとするのに対して、生徒指導は主に集団に焦点を当て、行事や特別活動などにおいて集団としての成果や変容を目指し、結果として個の変容に至るところにあります。教育相談は生徒指導の中心的な役割を担います(p.99)。

 また、生徒指導と近しい教育活動に進路指導があります。進路指導は、生徒が自ら、将来の進路選択・計画を行い、就職又は進学をして、さらには将来の進路を適切に選択・決定していくための能力をはぐくむため、学校全体として組織的・体系的に取り組む教育活動です。生徒指導と進路指導は、人格の形成に係る究極的な目的において共通していますが、学校において進路指導の中核を担う教員には、職業や産業社会に関する専門的な知見を持ち、進路選択等を行う能力をはぐくむための技能等が求められることなどから、学校では、進路指導は生徒指導とは異なる校内業務として、キャリア教育の推進の中に位置付けられています。(p.4)。

キャリア教育

 キャリア教育とは、一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育です。キャリア教育に関しては、文部科学省が、小学校、中学校、高等学校各々における、キャリア教育の手引きを作成しています。

 キャリア教育の枠組みとしては、「4領域8能力の枠組み」が参考にされています。4つの領域とは、「人間関係形成能力」、「情報活用能力」、「将来設計能力」、「意思決定能力」の4つです。そして、各領域には各々2つずつ計8つの能力が想定されており、「人間関係形成能力」領域には「自他の理解能力」と「コミュニケーション能力」が、「情報活用能力」領域には「情報収集・探索能力」と「職業理解能力」が、「将来設計能力」には「役割把握・認識能力」と「計画実行能力」が、「意思決定能力」には「選択能力」と「課題解決能力」が含まれています。そして、この各々の能力について、小学校の小、中、高学年、中学校、高等学校において、職業的(進路) 発達を促すために育成することが期待される具体的な能力・態度がまとめられています。例えば、低学年では、「自分のことは自分で行なおうとする」、中学年では、「計画づくりの必要性に気づき、作業の手順が分かる」、高学年では、「自分の長所や短所に気づき、自分らしさを発揮する」、「仕事における役割の関連性や変化に気づく」、「将来の夢や希望を持ち、実現を目指して努力しようとする」といったことなどが挙げられています(児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について、小学校キャリア教育の手引き(改訂版))。キャリア教育は、スクールカウンセリングとしての側面も持ちます。

スクールカウンセリング

 スクールカウンセリングは、児童生徒の心理的な発達を援助する活動であり、「心の教育」や「生きる力を育てる」などの学校教育目標と同じ目的を持つ活動です。カウンセリングは、人間の心理や発達の理論に基づく対人援助活動であり、個人の成長を促進し対人関係の改善や社会的適応性を向上させることから、様々な領域の対人援助サービスの専門家がそれぞれの場面で活用していますが、学校教育においても教員を中心としたスクールカウンセリング活動が実施されています。

 スクールカウンセリングの特徴は、原因を追及し病気を治療する治療モデルではなく、問題を抱えている児童生徒と関わり、児童生徒の問題を解決する力を引き出すことを援助する教育モデルによる活動というところにあります。スクールカウンセリングは、開発的カウンセリング・予防的カウンセリング・問題解決的カウンセリングの援助段階に分けて考えることができるとされます。
  開発的カウンセリングとは、将来、児童生徒が自立して豊かな社会生活が送られるように、児童生徒の心身の発達を促進し、社会生活で必要なライフスキルを育てるなどの人間教育活動です。全ての児童生徒を対象とし、教科学習や特別活動、総合的な学習など、学級、学校全体の教育活動を通して、児童生徒の成長を促進します。開発的カウンセリングの活動の視点として、「人権教育」「ライフスキル教育」「キャリア教育」などがあります。この中のライフスキル教育とは、効果的なコミュニケーションや、対人関係スキル、ストレス・コントロールといった、日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な10の能力を育むための教育です。
 予防的カウンセリングとは、児童生徒一人ひとりについて、性格、現在の状況、ストレス、悩み、問題などを把握し、問題が発生しそうな児童生徒に予防的に働きかけ、本人が主体的に自らの力で解決できるよう支援する活動です。
 問題解決的カウンセリングとは、人生を生きていく上で直面する様々な問題に対して、カウンセリング的アプローチによって問題の解決や不適応状態からの回復を援助することです(スクールカウンセリング)。

関連問題

●2018年‐問52 ●2018年(追加試験)-問97 ●2019年-問96 ●2020年-問99

参考文献