配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律:DV防止法
この法律において、「配偶者からの暴力」とは、「配偶者からの身体に対する暴力、又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」をいいます。配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に離婚をしたり、婚姻が取り消されたりした場合は、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等も含みます。
この法律でいう「被害者」とは配偶者からの暴力を受けた者をいい、「配偶者」には婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者も含みます。また、「離婚」には、婚姻の届出をしていない事実上の婚姻関係にあった者が、事実上離婚したといったことも含みます(第1条)。
配偶者からの暴力は、身体的なものや心理的なもの、性的なものなど様々な形をとってあらわれますが、その根底にはバタラー(batterer:暴力を振るう者)の「パワーとコントロール」があるといわれます。つまり、優位に立つものがそのパワーを用いて、弱い立場の者を支配するといったものです。そのパワーは社会構造に根差していることが多いため、社会問題としての側面を持つとも考えられます(日本DV防止・情報センター(編) 2004)。
また、被害者は、逃げないのではなく、「環境のバリア」や「家族や社会から期待される役割」、「バタラーによる虐待の心理的影響」、「子ども時代の被虐待経験」といったいくつもの要因が重なり、逃げられない状況になっていると捉えることもできます(尾崎 2005)。
都道府県は、各都道府県が設置する婦人相談所をはじめとする適切な施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにします(第3条第1項)。この配偶者暴力相談支援センターは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のために被害者の相談に応じて婦人相談員や相談を行う機関を紹介したり、緊急時における安全の確保や一時保護をおこなったりします(第3条第3項)。婦人相談員は、被害者の相談に応じ、必要な指導を行うことができます(第4条)。
配偶者からの暴力の被害者を発見した場合、配偶者暴力相談支援センターか警察官に通報するよう努めなければなりません(第6条第1項)。これと関連して、医療関係者は、被害者を発見したときには被害者の意思の尊重に努めつつ、配偶者暴力相談支援センターか警察官に通報することができます(第6条第2項)。この際、守秘義務に関する法律は通報することを妨げるものとはなりません(第6条第3項)。また、医療関係者は、被害者に配偶者暴力相談支援センター等の利用についての情報を提供するよう努めなければならないともされます(第6条第4項)。
配偶者暴力相談支援センターは、通報などをうけた場合には、必要に応じて被害者に業務の内容について説明や助言をおこない、必要な保護を受けることをすすめます(第7条)。また、警察は配偶者からの暴力が行われていると認めるときは、被害の発生を防止するために必要な措置をおこないます(第8条)。その他、福祉事務所は、児童福祉法や生活保護法などに基づき、被害者の自立を支援するために必要なことをおこないます(第8条の3)。
生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きい時は、被害者は裁判所に保護命令の申し立てをすることができます。そして、裁判所は被害者の申立てによって配偶者に対して、6か月間被害者の身辺につきまとうなどしてはいけないことや、配偶者と被害者が生活の拠点をともにしている場合には2か月間そこから退去し付近に近づいてはいけないことを命じることができます(第10条第1項)。
関連問題
●2018年-問120 ●2018年(追加試験)-問96 ●2019年-問150
参考文献
- 尾崎礼子 2005 DV被害者支援ハンドブック 朱鷺書房
- 日本DV防止・情報センター(編) 2004 知っていますか?ドメスティック・バイオレンス一問一答[第3版] 解放出版社