少年法

少年法

 少年法では、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」とあるように、罰するためでなく、健全な育成を期するための法律であるという性質を持ちます(第1条)。ここでの少年とは、20歳に満たない者を指しています(第2条)

 少年法では、大きく少年の保護事件(第2章)と、少年の刑事事件(第3章)についての規定がなされています。少年の保護事件では、少年は、①罪を犯した少年、②14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年。犯罪少年のうち14歳未満であるため法律上罪を犯したことにならない少年、③その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞(おそれ)のある少年に区別されます(第3条)。それぞれの少年は、犯罪少年、触法少年、虞犯少年と呼ばれます。これらの少年は基本的に家庭裁判所の審判を受ける事になります(第3条第2項)。

①これらの少年を発見した場合には、家庭裁判所に通告しなければなりません(第6条)。
②ただし、虞犯少年に関して児童福祉法による対処が適当だと思われる場合には、児童相談所へ通告することもできます(第6条第2項)。
③警察官は、触法少年を疑った場合には調査ができます(第6条の2)。その際、少年と保護者は、いつでも、弁護士である付添人を選任することができます(第6条の3)。その結果、家庭裁判所の審判に付することが適当であると思われる場合には、児童相談所長に送られ(第6条の6)、そこから家庭裁判所に送致されるという流れをとります(第6条の7)。
④刑事事件として警察などによって検挙され、検察庁に送致されたような場合であっても、少年の被疑事件に関しては、基本的に家庭裁判所に送致されます(第42条)。

 家庭裁判所では、事件を受理した後に家庭裁判所調査官による調査がおこなわれます。
⑤その際、必要に応じて少年鑑別所へ送致することができます(第17条の4)。少年鑑別所に収容される期間は,通常は最長2週間ですが,一定の事件で証拠調べが必要な場合は最長8週間まで延長することができます(第17条)。

 おこなわれた調査によってその後の方針が決められます。
⑥調査によって、18歳未満の少年について、児童福祉機関の指導にゆだねるのが相当と認められた時には、知事又は児童相談所長送致が決定されます(第18条)。
⑦また、審判をおこなうことが相当でないとされた場合には、調査のみを行なって審判を開かずに事件を終わらせることもあります(第19条)。
⑧さらに、死刑、懲役、禁固に当たる罪の事件について、調査の結果、刑事処分が相当と認められたときにや(第20条)、16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合には(第20条2)、検察官送致が決定されます(第20条)。また、18歳以上の少年(特定少年)の場合には、死刑、無期、短期一年以上の懲役、禁錮のいずれかに当たる罪の事件については、原則として検察官に送致されます(第62条)。処分に関しては、18歳未満で罪を犯した場合には、死刑は無期刑とされ、また無期刑では有期の懲役または禁錮を科すことができるように、死刑と無期刑には緩和がなされます(第51条)。
 そして、調査の結果、家庭裁判所での審判をおこなうことが相当であるとされ、審判がおこなわれた場合には、裁判官によって、少年が再び非行に及ばずに更生するにはどのような手当てが必要かということを十分に考えて最終的な処分が決定されます。

 家庭裁判所がくだす保護処分には、保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致があります(第24条)。
⑨施設に入所させることなく、社会の中で生活させながら、保護観察官や保護司が指導監督を行い、少年の改善更生を図ることが相当と認められた時にされる場合には、保護観察決定がなされます。
⑩また、再非行のおそれが強く、社会内での更生が難しい場合に、少年を少年院に収容して矯正教育を受けさせることが相当と認められた時には少年院送致決定がなされます。
⑪そして、比較的低年齢の少年について、開放的な福祉施設での生活指導が相当と認められた場合には、児童自立支援施設等送致決定がなされます。
⑫保護処分の必要がないとされた場合には、不処分となることもあります(第23条)。不処分や審判不開始で終わる場合でも、裁判官や家庭裁判所調査官による訓戒や指導、犯罪被害について考えさせる講習などといった教育的な働きかけを行っており、少年及び保護者がそれをどのように受け止めたかを見極めた上で決定を行います。
 ただし、特定少年の保護処分については、6か月の保護観察、2年間の保護観察(遵守事項に違反した場合には少年院に収容することが可能)、少年院送致(3年以下)から、選択されることになります(第64条)。

 家庭裁判所の審判に付された少年などについては、当該事件の本人であることを推知できるような記事や写真を出版物に掲載してはいけません(第61条)。ただし、特定少年のときに犯した罪によって公訴を提起された場合には適用されません(第68条)。

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●2021年-問108