特性論

目次
オールポートの特性論
ギルフォードの13特性
キャッテルの16特性
アイゼンクの2特性
5因子モデル
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性格特徴のなかで、一貫して出現する行動傾向やそのまとまりを特性と言います。例えば、「あの人は他人に優しいし、社交的でユーモアもあるよ」と言う時には、性格を言い表すために “優しさ”、“社会性”、“ユーモア”といった特性が想定されていると見ることができます。このほかにも特性には様々なものが考えられますが、こういった特性をパーソナリティ構成の単位と見なして、各特性の組み合わせによって個人のパーソナリティを記述する立場を性格特性論と言います。
また、特性の中には多くの人に共通する特性もあると考えられ、それを基準とすることで個人間の違いを比較しやすいという利点があります。その反面、人の統一性や独自性を捉えにくいという欠点があります。
特性論と比べられるものとして類型論がありますが、類型論は特性の組み合わせから性格を捉えようとするのではなく、「A型は真面目で几帳面で堅実的」といった具合に類型から推測される性格傾向からその人の性格を捉えようとします。ちなみに、この場合の血液型はあくまでも類型論を理解するための例であり、心理学的に妥当性が認められた類型というわけではありません。

オールポートの特性論

特性論は、オールポート(Allprt,G.W.)によって唱道されました。オールポートは、英語の辞典から、正確表現に関するものを調べ、人が共通に持ち、他者と比較しうるようなものを共通特性、他者とは比較できないようなものを個人特性としました。
オールポートは、多くの人々に量的な違いがあるだけで共通の特性としてあげられる共通特性について、心誌(psychograph)にまとめています。心誌では、心理生物学的要因として身体・知能・気質の3項目に、共通特性として表出的・能動的の2項目に、それぞれ下位項目が設定されており、共通特性の表出的特性には、支配-服従、自己拡張-自己縮小、持久-動揺という3特性を、能動的特性には内向-外向、自己客観視-自己欺瞞、群居-独居、理論的-非論理的などの11特性を挙げています。

ギルフォードの13特性

ギルフォード(Guilford,J.P.)は、アメリカで用いられていた向性検査をもとにして選定した175の項目からなる検査を実施し、その資料について因子分析をおこない、S:social introversion(社会的内向性)、T:thinking introversion(思考的内向性)、D:depression(抑うつ性)、C:cyclic tendency(回帰性傾向、気分の変わりやすさ)、R:rhathymia(のんきさ)という5因子を抽出しました。そして、向性はこれら5因子を含むものであることを想定し、ギルフォード人格目録を作成しました。それに次いで、マーティン(Martin,H.G.)の協力をもとに、人格特性一般について尺度化可能な次元を求めて、G:general activity(一般的活動性)、A:ascendance(支配性)、M:musculinity(男らしさ)、I:inferiority feelings(劣等感)、N:nervousness(神経質)の5因子による尺度を開発しました。さらに、人事管理の目的に応じて、主として社会適応性を見るために、O:lack of objectivity(客観性の欠如)、Ag:lack of agreeableness(愛層のなさ)、Co:lack of cooperativeness(協調性の欠如)の3因子による人事用の尺度を考案しました。
これらの因子はその後、矢田部達郎らによってM因子が除かれ、残りの12因子に基づいて矢田部・ギルフォード性格検査が作成されています。

キャッテルの16特性

キャッテルは、オールポートの考えに基づいて、個人に特有の独自的特性と共通特性とに分けましたが、因子分析の結果、それぞれをさらに表面的特性と根源的特性とに分けました。表面的特性とは、人とのかかわりや仕事の仕方などにおいて、直接情緒にあらわれるものです。一方で根源的特性とは、人格構造のより深い層に位置するもので、直接には観察されず、表面的特性という媒介を通じて表現されるもので、因子分析の結果捉えられるようなものです。
キャッテル(Cattell,R.)は、因子分析を進めるにあたって、どれくらいの人数に実施するか、どれくらいの時間を想定するか、どれくらいの変数を用いるかという組み合わせによって、
O,P,Q,R,S,Tという6つの因子分析の技法を考えました。そのうち、時間軸を固定して、複数の被験者に、複数の変数からなる性格テストを施行し、そこから得られた因子によってパーソナリティを記述しようとするR技法を中心に、16の性格特性を見出しました。

アイゼンクの2特性

アイゼンク(Eysenck,H.J.)は、ユングとクレッチマーの研究に影響を受けつつも、科学的操作を経て定義され、測定できるものではなかった性格の次元を、科学としての適切な手続きを経た上で明らかにしようとしました。そのため、特に因子分析の手法を用いて、性格を少ない変数にまとめていきました。
アイゼンクは、特殊反応水準、習慣的反応水準、特性水準、類型水準という性格の階層的な構造を想定しました。特殊反応とは、個々人が似た状況で繰り返す行動の水準です。習慣的反応とは、様々な状況において繰り返し現れる行動で、特殊反応の上位の水準にあたります。慣習的反応の上位水準には特性があり、いくつかの習慣的反応が特性から派生するとされます。例えば、社交性という特性を想定した時に、多数の人を社交性に関連する場面にあてはめ、ある場面で社交的であった人が他の場面でも社交的であったり、逆にある場面で非社交的であった人が他の場面でも非社交的であったりすれば、そこに社交性という特性を仮定することができます。
特性をさらに高い水準で統合したものが、類型水準です。これは類型論における類型に相当するものです。アイゼンクは、この類型に、外向性-内向性と神経症傾向を想定しました。神経症傾向とは、情緒の安定性‐不安定性に関わる次元です。
内向性‐外向性はユングに影響をうけていますが、ユングがリビドーの向きという検証が難しい側面に基づいてこの次元を設定した一方で、アイゼンクは“社交的、衝動的、楽天家”や“内気、慎重、悲観的”のように相互に相関の高い、検証の可能な特性の集まりとして設定しています。

5因子モデル

過去の研究が蓄積され、また、因子分析の手法が進歩した事に伴って現在では性格に関して、研究者によって完全には一致しないものの、5つの比較的独立な因子が抽出がされています。5因子とは、エネルギッシュ、社交性、断定的などの性格特徴を内容とするextraversion(外向性)、愛情のある、愛想のよい、信頼するなどの性格特徴を内容とするagreeableness(協調性)、信頼のおける、計画性、能率の良さなどの仕事の仕方、社会的に規定される衝動のコントロールなどの性格特徴を内容とするconscientiousness(良心、誠実性)、不安がる、神経質、容易に困惑するなどの性格特性を内容とするemotional stability(情緒安定性)、想像性、文化的洗練、幅広い興味など人の精神面の人生経験からつくられる深い複雑な性格特徴であるculture(文化)です。

<参考文献>

  • MPI研究会 1969 新・性格検査法‐モーズレイ性格検査‐ 誠信書房
  • 詫摩武俊(編著) 1978 性格の理論 誠信書房
  • フロイトやユング、クレッチマーやレヴィン、オールポートといったパーソナリティ理論の提唱者ごとに、その人物の生涯とあわせて理論がまとめられています。

  • 詫摩武俊(監修) 1998 性格心理学ハンドブック 福村出版
  • 性格について、その基礎理論をはじめとして、ライフステージという視点からや、環境という視点などから多角的にまとめられています。

  • 辻岡美延 1967 新性格検査法-Y-G性格検査実施・応用・研究手引き- 竹井機器工業株式会社
  • 塚田毅 1980 人格心理学概説 共立出版株式会社

関連問題

2018-9

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  1. 類型論
  2. 特性論