田中ビネー知能検査

田中ビネー知能検査

 初等教育制度の確立に伴って生じた、知的遅滞の科学的診断の必要性に応じて、1904年にパリの文部当局が委員会を発足させました。その委員の一人であったビネー(Binet,A)は、弟子のシモン(Simon,T)とともに、1905年に世界初の知能検査である、知能測定尺度を開発しました。その後、ビネー法は1908年、1911年と改訂を重ねつつ、画期的なものと評価されて諸外国に広まっていきました。

 ビネー法は、知能を各因子に分かれた個々別々の能力の寄せ集めと考えるのではなく、1つの統一体として捉えているとされます。つまり、記憶力や弁別力、推理力などの様々な能力には基礎となる精神機能が存在し、それが一般知能であると考えられます。ビネー本人は知能を明確には定義しませんでしたが、ビネーの論文からは①方向性:到達すべき目標が何であるかを理解する能力(問題の理解)、②目的性:目標に向かって解決策を求め、試み続ける能力(遂行力)、③自己批判性:目標に到達できたかどうかを判断する能力(判断能力)を想定していたとされています。

 検査が各国にあうように標準化されていく中で、アメリカでは1916年にターマン(Terman,L.M)が「スタンフォード改訂増補ビネー・シモン知能測定尺度」を公表しました。その後、アメリカでは1937年、1960年、1986年と改訂されていきます。日本では、ビネー法を様々な人物が様々な版を標準化しています。田中寛一は、1947年に1937年版スタンフォード改訂案をもとに、「田中びねー式知能検査」を作成しました。その後、日本でも1854年、1970年、1987年、2003年に改訂されており、5版目にあたる2003年版は「田中ビネー知能検査Ⅴ」とされています。

 田中ビネー知能検査Ⅴの適用年齢は2歳から成人です。問題は、年齢尺度といわれる構成になっており、各問題は年齢の低い子どもが取り組みやすい易しい問題から、年齢が高くなるにしたがって徐々に難しい問題になるように配列されています。検査には1歳級から13歳級までの年齢級が設定されており、各年齢級は複数の問題で構成されています。各年齢級の問題は同年齢の子どもの約55~75%が通過できるような問題構成となっています。ただし、幼児や児童に関しては年齢との関係で知能発達が変化していく傾向が見られるものの、生活年齢が高くなるにつれて年齢との関係だけでは知的発達が捉えられなくなります。そのため、14歳以上には成人級という年齢尺度ではない問題が設定されています。これに伴い、2歳から13歳11ヶ月の被検者と、14歳0ヶ月以上(成人)の被検者への検査手順は異なります。前者に対しては、年齢尺度で構成された課題を実施します。子どもの生活年齢と等しい年齢級から実施し、全問題を合格できる年齢級まで年齢級を下げて実施していった後に、全問題が不合格となる年齢級まで年齢級を上げて実施していきます。一方で後者の成人に対しては、原則的に成人級の問題を全て実施し、下の年齢級に下がることはしません。

 2歳から13歳11ヶ月の検査結果からは「精神年齢(mental age: MA)」が算出できるようになっています。これを子どもの実際の歴年齢である生活年齢(Chronological Age: CA)で割り、100をかけることで、「知能指数(intelligence quotient: IQ)」が算出されます(IQ=MA/CA×100)。精神年齢は子どもの知能発達の水準を示し、MAを手がかりに何歳程度の活動に取り組ませると発達が促進されるかがわかります。しかし、MAそれ自体は知能の高低や遅速を示すものではありません。IQが同年齢集団の中で、個人の知能の高低や遅速の指標となるのです。14歳0ヶ月以上の被検者に対しては、MAやIQを算出せず、粗点を評価点に換算し、偏差知能指数(Deviation intelligence quotient: DIQ)を求めます。例えば生活年齢40歳の人が精神年齢20歳と評価された場合と、80歳と評価された場合どちらが優れているか判断しにくくなるように、MAやMAを用いて算出されたIQは成人の場合には役に立たないからです。また、成人級の問題は、「結晶性領域」、「流動性領域」、「記憶領域」、「論理推理領域」の因子に分けることができ、各々の観点から結果を評価することができるようになっています。この他、あくまでも2歳以上子どもフォローするための指標ではありますが、1歳級の問題にも不合格が目立つ子どもに対して、更なる発達の指標として1歳級の下に「発達チェック」という項目が設けられています。

関連問題

●2018年-問137 ●2018年(追加試験)-問138 ●2019年-問88問130問140 ●2020年-問72

参考文献

  • 財団法人田中教育研究所 2003 田中ビネー知能検査Ⅴ 理論マニュアル 田研出版株式会社
  • 財団法人田中教育研究所 2003 田中ビネー知能検査Ⅴ 実施マニュアル 田研出版株式会社
  • 財団法人田中教育研究所 2003 田中ビネー知能検査Ⅴ 採点マニュアル 田研出版株式会社

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