認知症

認知症

認知症とは、一度正常に発達した脳の知的機能が、後天的な脳の器質障害によって持続的に低下し、日常・社会生活に支障をきたす状態をいいます。かつて痴呆症と呼ばれていましたが、2004年に認知症へと呼び変えられるようになりました。

認知症を引き起こす原因には、神経変性や脳血管障害、外傷、感染、腫瘍などが挙げられます。

一般的に神経変性疾患は、不可逆性に進行し治療が困難ですが、認知症の中には早期に治療を行うことで認知機能が回復する治療可能な認知症もあります。正常圧水頭症、HIV脳症、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、神経梅毒などがそれにあたり、原疾患の治療によって認知機能が回復する可能性が高まります。

認知症の症状は大きく2つに分けられ、脳の障害により直接起こる中核症状と、中核症状に付随して引き起こされる二次的な症状である行動・心理症状(BPSD:Behavioral and psychological symptoms of dementia)とがあります。中核症状は、記憶障害、見当識障害、失語、失行、失認、遂行機能障害などがあたり、BPSDには、不眠、徘徊、暴力、興奮、不安、焦燥、うつ状態、幻覚、妄想などがあたります。

また、認知症までは至らないが、記憶など認知機能の低下が年齢相応以上に認められる状態を軽度認知障害(MCI : mild cognitive impairment)と呼びます。

高齢者のうつ病(仮性認知症)は、一見認知症に類似する症状を呈するため、特に鑑別が必要です。

代表的な認知症疾患には以下のようなものがあります。

アルツハイマー病

1906年にドイツの精神科医で精神病理学者であったアルツハイマー(A.Alzheimer)によって報告された変性疾患による認知症です。脳の病理所見としては、神経細胞脱落(アポトーシスによる神経細胞死)、老人斑(アミロイド蛋白の沈着)、神経原線維変化(異常リン酸化タウ蛋白の沈着)を認め、大脳皮質や海馬を中心に委縮がみられます。これに伴い、認知機能の低下や記憶力の低下が徐々に生じます。

 多くは早期から側頭葉や頭頂葉で血流・代謝の低下がみられます。

びまん性レビー小体病

変性疾患による認知症ではアルツハイマー病に次いで頻度が高いもので、大脳皮質など中枢神経系に広汎にレビー小体を認めます。レビー小体とは、神経細胞内に出現する円形の細胞質封入体です。レビー小体が脳幹に認められるパーキンソン病と同様、安静時振戦、無動、姿勢反射障害などのパーキンソニズムが生じ、認知障害は変動しやすく、幻視の出現頻度が他の認知症よりも多いことが知られています。

 多くは後頭葉の血流低下がみられます。

ピック病

1982年にピック(Pick,A)よって報告された、前頭葉や側頭葉に高度の萎縮がみられる疾患です。萎縮部位によって、前頭型、側頭型、前頭優位型、側頭優位型、前頭側頭型に分けられますが、前頭葉が優位に障害されていても、側頭葉にも何かしらの病変がみられることが多い疾患です。

前頭型や前頭優位型の場合には人格変化からはじまり、無関心や無頓着でだらしない生活態度、協調性の欠如などが見られるようになります。また、側頭葉優位の変性を呈する場合には、失語症を呈します。

 多くは前頭葉や側頭葉で血流の低下がみられます。

血管性認知症

脳血管の病変によって引き起こされる認知症をいいます。血管性認知症は、病変の広がりや病変の部位などから分類がなされています。

参考文献

  • 医療情報科学研究所 2011 病気が見えるvol.7. 脳・神経 メディックメディア
  • 松下正明(総編) 1998 老年期精神障害 中山書店
  • 坂井建雄・久光正(監修) 2017 ぜんぶわかる 脳の事典 成美堂出版
  • 日野原重明・井村裕夫(監修) 2005 看護のための最新医学講座[第2版]17 老人の医療 中山書店
  • 平井俊策 2002 アルツハイマー病 日本内科学会雑誌 91(8) pp. 2367-2371

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