行動療法

行動療法

 行動療法とは、学習理論を理論的背景とした心理療法です。行動療法では、問題行動を学習されたものと捉えて、学習の原理によって修正や消去をおこないます。行動療法という名称は、スキナー(Skinner,B.F.)らによって現在の行動療法との関連をもって最初に用いられました。それと時期を同じくして、ウォルピ(Wolpe,J.)やアイゼンク(Eysenck,H.)らが独自に学習理論を基礎とした治療法を提唱したものが、行動療法の基盤となっています。このように、他の精神療法の多くが一人の臨床家によって創始されたものであるのに対して、行動療法は、学習に関する研究の臨床への応用としていくつかの独立した起源をもつという独特な側面があります。

 行動療法の背景にある学習理論とは、レスポンデント条件づけオペラント条件づけといった理論です。アイゼンクやウォルピに代表される、レスポンデント条件づけの原理を中心に扱った行動療法は、英国を主として発展しました。レスポンデント条件づけとは、私たちに不随意な反応を誘発する無条件刺激を用いて、本来その不随意反応が生じない刺激にまでその反応が生じるようにしていくものです。この観点からは、不安や恐怖に関連する問題行動を、“不安や恐怖を喚起する無条件刺激”と“不安や恐怖とは何ら関係のなかった条件刺激”が条件づけられた結果と見ます。そして、その学習を修正しようと系統的脱感作やエクスポージャーといった技法を用いて、主に個人に対して働きかけていきます。系統的脱感作とは、ウォルピによって開発された技法で、恐怖を引き起こす刺激がその強度の順に並べられた不安階層表を作り、それをもとにしてリラクセーションと恐怖刺激へ曝されていく経験を組み合わせて段階的におこなうことで、恐怖や不安を弱めていく方法です。エクスポージャーとは、強迫行動を起こさせるような、主として不安な刺激を繰り返し提示することによってその刺激に慣れさせる方法です。
 スキナーに代表される、オペラント条件づけの原理を中心に扱った行動療法は、米国を主として発展しました。オペラント条件付けとは、私たちが自発する反応に刺激を随伴させて、その反応の頻度や強度などを変えていくものです。この観点では、行動を、行動が自発する条件である“先行事象”→“行動”→今後の行動の生起の仕方に影響する行動の結果である“結果事象”という三項随伴性から捉えます。例えば、子どものかんしゃく行動は、周囲が自分に注目してくれないという先行事象があって起こり、かんしゃく行動の結果周囲が自分に注目してくれるようになるという結果事象があるため、その行動が続いたり増えるようになっているかもしれません。つまり、行動をその前後の状況も含めて見ていくのです。そして、そのような行動に対して、機能的アセスメントやシェイピング、トークン・エコノミーといった技法によって、主に環境に働きかけていきます。機能的アセスメントとは、先行事象、行動、結果事象という三項から行動の機能を明らかにしようとすることで、行動の機能を特定するために環境要因を操作して行動がどう変化するかを確認する手続きを機能分析といいます。シェイピングとは、起点となる行動から完成形の行動へ向かって、より近い行動を分化強化していくことで、行動をマネジメントしていく方法です。トークン・エコノミーとは、コインやおもちゃのお金といった幅広い強化子を用いて行動をマネジメントしていく方法です。
 行動療法では、これら学習理論をもとに発展してきた技法を臨機応変に使いこなして治療を進めていきます。そのために、まず問題の解決に向けて変化させたい標的行動を明確にします。そして、標的行動が決定したら、頻度や持続時間、割合などの様々な側面から現状における標的行動の情報を集めます。その後、介入を行いながら引き続き情報を集めていき、介入前後での行動の変化を検討していきます。

参考文献

  • 三田村仰 2017 はじめてまなぶ行動療法 金剛出版
  • 宮下照子・免田賢 2007 新行動療法入門 ナカニシヤ出版
  • 山上敏子 2007 方法としての行動療法 金剛出版
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