少年非行

少年非行

少年非行の現状

 警察庁生活安全局少年課が出している「少年の補導及び保護の概況」では、犯罪少年、触法少年、虞犯少年を非行少年としてその動向などについて述べています。犯罪少年とは、罪を犯した少年(20歳に満たない者(少年法第2条))をいいます(少年法第3条第1項第1号)。触法少年とは、14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年をいいます(少年法第3条第1項第2号)。虞犯少年とは、保護者の正当な監督に服しない性癖があるなど、一定の事由があって、その性格又は環境から判断して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年をいいます(少年法第3条第1項第3号)。

 刑法犯少年の検挙人員は、全体として平成16年以降減少し続けています。罪種別に見た場合、殺人、強盗、放火、強制性交等を含む凶悪犯は、平成24年をピークに減増を繰りかえし緩やかに減少しています。平成30年では、検挙人員総数に凶悪犯が占める割合は1.97%でした。
 年齢別にみた場合、平成27年までは年少少年(14,15歳)、中間少年(16、17歳)、年長少年(18、19歳)の順に多かったのですが、年少少年の人口比の減少傾向は相対的に大きく、平成28年には中間少年の人口比を下回り、令和元年には年長少年の人口比を下回りました。
 学識別にみると、学生・生徒の割合が、学生・生徒以外の割合よりも多くを占め、中でも高校生によるものが最も多い傾向があります。
 共犯率は、成人同士の共犯率よりも高い傾向にあり、ますが緩やかな減少傾向で推移しています。平成30年は、21.8%でした。
 校内暴力の件数は、平成26年以降減少の傾向にありますが、小学校では平成26年以降も増加傾向にあります(令和元年中における 少年の補導及び保護の概況)。

少年非行の手続き

 少年非行の処理は以下のように進められます(法務省大臣官房秘書課広報室 2022)。

 非行少年は、いわゆる「全件送致主義」といって(春原 2021)、基本的にまず家庭裁判所に送致されます(少年法第3条、第6条)。ただし、虞犯少年、触法少年は、児童相談所へ送致される場合もあります(少年法第6条第2項、第6条の6)。警察が触法少年を発見して調査した結果(少年法第6条の2)、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合などにおいては、児童相談所長に送致しなければなりません(少年法第6条の6)。これを受けた児童相談所長は、原則家庭裁判所に送致しなければなりませんが、調査の結果その必要がないと認められるときは、この限りではありません(少年法第6条の7)。また、この際に、児童相談所長は、必要に応じて児童福祉法に基づく措置をとることもできます(児童福祉法第26条第1項第1号)。

 家庭裁判所では、審判が必要と考えられる場合は、調査をしなければなりません(少年法第8条)。審判をおこなうために必要がある時は、家庭裁判所調査官による観護や、少年鑑別所への送致がおこなわれます(少年法第17条)。

 少年鑑別所は、鑑別対象者の鑑別をおこないます(少年鑑別所法第3条)。少年鑑別所では、法務省矯正局が開発した、法務省式ケースアセスメントツール(Ministry of Justice Case Assessment tool:MJCA)を運用しています(令和2年 犯罪白書、令和元年版 犯罪白書)。MJCAは、RNR原則に立脚した考え方のもと、開発が進められたツールです。法務省式ケースアセスメントツールは、静的領域,動的領域の2領域(全52項目)で構成されています。 静的領域とは、教育上の必要性や再非行の可能性等を把握する上で特に過去の経歴等に着目するものです。静的領域は、生育環境、学校適応、問題行動歴、非行・保護歴、本件態様から構成されています。動的領域とは、意欲、態度など、今後の教育等によって変化し得る要素に着目するものです。少年院での矯正教育や保護観察所の指導などを通じて 改善が期待できるものであり,再非行防止に向けての働き掛けの目 標となります。動的領域は、保護者との関係性、社会適応力、自己統制力、逸脱親和性から構成されています(法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)について)。

 他にも、少年鑑別所は非行及び犯罪の防止に関する援助をおこないます(少年鑑別所法第3条)。また、少年鑑別所は、「法務少年支援センター」として、関係機関・団体と連携を図りながら、地域における非行・犯罪の防止に関する活動や健全育成に関する活動の支援などに取り組んでいます。具体的には、個人や保護者など、関係機関などへの相談や助言、研修会などへの講師派遣や事例検討会への出席をおこなっています。また、相談や助言に際しては、必要に応じて、心理検査を実施し、本人の特性に応じた指導上のポイント等を助言しています(平成28年版 子供・若者白書)。

 こういった調査の結果、児童福祉法による措置が相当だと判断した場合は、都道府県知事か児童相談所長へ送致します(少年法第18条)。この送致を受けた児童に対して、児童相談所長は、児童自立支援施設への入所が必要と認めた場合には、都道府県知事に報告することなどができます(児童福祉法第26条第1項第1号)。

 調査の結果、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件で、刑事処分が相当だと判断した場合は、検察官へ送致します(少年法第20条)。また、いわゆる「原則逆送」として(春原 2021)、16歳以上の少年が、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件の場合は、原則検察官へ送致します(少年法第20条第2項)。ただし、18歳未満の時に犯した罪に対しては、本来死刑が科される場合は無期懲役が、本来無期懲役が科される場合は有期の懲役または禁錮による刑が科されます(少年法第51条)。14歳未満は、刑法によって罰せられません(刑法第41条)。

 家庭裁判所は、このような、検察官への送致をする場合や、都道府県知事か児童相談所長へ送致する場合を除いて、①保護観察、②児童自立支援施設又は児童養護施設送致、③少年院送致、いずれかの保護処分の決定をします。決定の時に14歳に満たない少年に係る事件についても、特に必要と認める場合には、少年院へ送致することができます(少年法第24条)。少年法では、「保護処分主義」として、刑法上は刑罰による社会的非難が可能な犯罪少年についても保護処分を中心とした教育的処遇を優先させます(春原 2021)。

 少年院や刑事施設では、受刑者等の出所時の就労の確保に向けて、就労支援スタッフが配置されています。加えて、厚生労働省と連携し、刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施しています。この施策は、刑事施設、少年院、保護観察所及びハローワークが連携する仕組みを構築した上で、支援対象者の希望や適性等に応じ、計画的に就労支援を行うものです。その一環として、刑事施設では、支援対象者に対し、ハローワークの職員による職業相談、職業紹介、職業講話等を実施しています(平成30年版 犯罪白書 第2編 第4章 第2節 4)

 裁判によって決定された保護観察処分や仮退院など保護観察を必要とする処遇において、保護観察対象者は、保護観察所へ出向き、保護観察官による⾯接を受けます。導入面接で、保護観察処分の少年に対しては、特別遵守事項の設定や⽣活⾏動指針の設定などを検討します。(保護観察所における保護観察の実情について)

関連問題

●2022年-問25問58 ●2021年-問69 ●2020年-問55問101 ●2019年-問55 ●2018年(追加試験)-問20問106問114 ●2018年-問99 

参考・引用文献

  • 古山正成 保護観察所における保護観察の実情について(平成29年5⽉31⽇(⽔)法制審議会 少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第3回会議 資料)
  • 警察庁生活安全局少年課 2019 令和元年中における少年の補導及び保護の概況
  • 法務省矯正局 2013 法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)について
  • 法務省大臣官房秘書課広報室 2022 法務省 2022 令和4年版
  • 法務省 平成30年版 犯罪白書
  • 内閣府 平成28年版 子供・若者白書
  • 春原寛子 2021 少年法の適用年齢引き下げをめぐる議論 第2版 調査と情報 ISSUE BRIEF1137 1-12