公認心理師の業の概要

目次
はじめに
観察及び分析と、援助
面接における観察及び分析

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はじめに
この記事は、公認心理師の業にあげられている、観察および分析、援助に関する概要が記されていますが、他の記事とは若干性質の異なるものとなっています。
それは、心理学史や法規に関するものとは異なり、明確な正解が何かというものが分かりにくいものについて(そもそも正解があるのかすらわからないものについて)、言及されているからです。
そのため、この記事は他の記事と同様、公認心理師試験の問題と正答からボトムアップ的に作成されていますが、情報の妥当性という点において、他の記事よりも曖昧な面を含むということをお心置きください。この点を補うためにも併記してある過去問題を参照しつつ、批判的に読み進めていただければと思います。
また、この記事は、複数の目次の下にいくつかのテーマが分類されていますが、それは任意の分類であり、特定の目次に限定的な内容ではないという点にもご注意ください。例えば、治療同盟は「面接における観察および分析」に分類されていますが、それは面接に限ったことではなく、また、面接における観察および分析の段階のみならず、援助の段階でも共通するテーマとなっています。
以下では、面接に限定されない観察及び分析と援助について見た後に、観察及び分析と、援助を面接の過程に照らしながら見ていきます。

観察及び分析と、援助

公認心理師法における公認心理師の仕事として、心理に関する支援を要する者(以下、クライエント)の心理状態の観察、その結果の分析と、援助が挙げられています。

この観察及び分析のうち、観察は情報収集のための一つの方法です。
情報収集は、本人の話から、目の前で話をする本人の様子から、各種検査から、可能であれば日常場面の本人の言動から、場合によっては関係者から等、様々な水準からおこなわれ得ます。
情報を収集する方法には様々なものがありますが、どのような場合であっても絶対に取らなければならない方法というものはありません(2018-122)。これは情報収集に限ったことではありませんが、方法が目的に先行することはなく、目的があってそれに応じた方法が取られるものだからです。
観察と分析において、必ず心理検査がおこなわれるということも、必ず日常場面での観察がおこなわれるということもありません。基本的にはまず目の前のクライエントから情報を収集し、必要性や実現可能性に応じて、その他の方法がとられていくことになるでしょう。
これらによって得られた情報を、分析してつなぎ合わせていくことで、一面的で平面的なクライエント像でなく、多面的で立体的なクライエント像を描き出し、より適切な援助へつなげていくことになります。

このように、クライエントを観察し分析することの目的の1つは、それによってより有効な援助につなげていくということです。
援助に関しても、各種心理療法や集団による援助、心理教育をおこなったり必要な社会資源につなげたり、より適切な支援機関へリファーを検討したりと様々な選択肢がある中で、より有用なものを選択し提供するためには、闇雲に進めるのではなく、観察と分析に基づいたクライエントの理解に基づいて進めていく必要があります。
例えば、病院に来た人全ての人に、観察や分析なしに一様に風邪のための薬を処方するという援助をおこなうことが適切でないことは想像に難くないでしょう。風邪薬は風邪をひいている人に対して有効な援助方法であって、骨折をしている人には必ずしも有効ではありません。病院に来た人に対して、観察し分析して風邪であるとすることで、風邪薬を処方するという有効な援助が可能になるのです。これが風邪薬でなく他の劇薬であった場合を考えてみると、観察し分析するといった過程を踏まない援助が、有効でないといった結果にとどまらず、害にすらなり得ることが想像できるでしょう。
このように、クライエントを観察し分析した先に、援助の提供があるという過程は、心理臨床においても同様です。
つまり、観察及び分析がなされて、それに基づいて援助が提供されるのであって、観察・分析することなしに援助が提供されるということは基本的にはないと言えるでしょう(2018-626769)。
観察し分析して、援助をおこなうという一連の過程は、援助をすることで終わるのではなく、援助の結果をさらに観察、分析してよりよい援助につなげていくという循環を形づくります。観察、分析によるクライエントの理解は絶対的なものでなく、常に暫定的なものです。
観察および分析に基づいて援助を行った結果、新たな要素や当初の分析からは予測がつかなかった結果が観察されたような場合に、それを踏まえて分析の内容を修正し、修正されたものに基づいた援助がおこなわれるといった循環がなされていきます。

面接における観察と分析

上述のように、観察・分析と援助の方法には様々な選択肢があり、目的や状況に応じて柔軟に選択されていくわけですが、ここからは特に、セラピストとクライエントが1対1で顔を合わせてやりとりをする面接場面に限定して、観察・分析と、援助のプロセスを見ていくこととします。
観察・分析に基づいて援助が進められるという関係性は、面接においても同様です。
ただし、セラピストとクライエントの交流をミクロの視点で見ていくと、クライエントの話の内容や態度などを受けて応答しさらにその反応に対して働きかけていくという1回の面接中に見て取れるやり取りには、クライエントを観察し分析する要素と、それに基づいて援助するという要素が含まれています。また、観察・分析し理解しようとする関わりそのものが援助的であったりもするので、ミクロな視点で見るほどその区別は曖昧になっていきます。
このような特性が面接にある中で、面接単位でのプロセスに目を向けると、特にクライエントに関する情報がその後の面接に比べて相対的に少ない面接の初期には、ひとまず暫定的な理解を得るために、観察及び分析的な関わりが、援助的な関わりよりも必然的に濃くなります。
心理臨床において従来使用されてきた、観察及び分析に相当する用語としては、「アセスメント」や「見立て」、「ケースフォーミュレーション」などが挙げられるでしょう。査定や評価を意味する「アセスメント(assessment)」や、診断の意味を持つ「見立て」、直訳すると「事例の定式化」となる「ケースフォーミュレーション(case formulation)」からは、いずれからも観察し分析するといった要素が見て取れます。
ここでは、観察・分析的な関わりが相対的に強くなる、セラピストとクライエントが初めて顔を合わせる初回面接からフィードバックをおこない契約を結んで具体的な援助方法が導入されるまでの面接のことをアセスメント面接と呼ぶことにします。
アセスメント面接では、むやみに不要な情報を聞き出すべではありませんが、クライエント理解のためにある程度把握が望まれる情報もあります。例えば、成育歴や家族状況、医学所見などはクライエント理解のための手がかりを与えてくれるものです。これらからは、その人が取りやすい他者との関係や、ライフサイクルにおける課題、生物学的な水準の問題など、クライエントの理解を進める上で重要となる情報を得ることができます。

コンプリメント(ねぎらい)(2018-70,139
面接でセラピストとクライエントが直接顔をあわせる前から、クライエントの面接に対する思いははじまっています。
安心感が脅かされる場面では、人は被害的になりやすいものです。そして、そのような状況は、自分が追い詰められている事を他の人に伝え、助けを求めることを難しくします。このような中で、クライエントは面接にやってきます。それはある面で、クライエントの強さでもあります。
こういったクライエントに対して、コンプリメントの視点を持つことは、クライエントが自分の肯定的変化や長所、資源に気づくために役に立ちます。
ただし、コンプリメントの際には、セラピストの親切心からおこなうのではなく、クライエントの言葉から出てきた現実に根差したものに対して、クライエントにとって重要なものに注目させるためにおこなわれる必要があります。

作業同盟(2018(2)-13,16,121
セラピストとクライエントの間に存在する人間関係を指してラポール(rapport)と言います。感情的な親密さや、お互いが信頼し合う関係を意味するラポールは面接を進めていく上で重要とされ、親密で温かい感情の交流をもつように心がけるセラピストの受容的態度によってラポールが形成されるとされます。そのため、ラポールの形成は初回面接において意識することの1つとして挙げられます。
このラポールがもとになり、次第に面接を共に進めていく関係性が形作られていきます。
作業同盟は、治療同盟と同義で使われることが多い概念ですが、セラピスト-クライエント関係の中で治療という共通の目的のために両者が手を組んでいる部分を指す概念です。ここでは、ラポールを基礎として築かれる、協力して治療へ取り組む関係性を指して作業同盟と呼びます。
面接は、来談経緯を聞くことからはじまります。それは、クライエントにとって面接がどういう位置づけにあるのかを確認し、クライエントのニーズを共有することにつながるからです。
例えば、面接に来たクライエント全員が自ら望んで面接に来ているとは限りません。中には、親や上司から半ば強制的に面接へ行くように言われて、自分に問題があるとは思っていないにも関わらず、面接に来ることになった人もいるでしょう。
このようなクライエントに対して、自分の持つ何かしらに問題を感じてそれを何とかしていこうとしているというスタンスで面接を進めると、当然話はかみ合いません。このような場合には、面接に連れてこられたことの原因を考え、どうすれば面接に連れて来られなくて済むのかについて考えることが、関わりとしてより適切なのかもしれないのです。
面接は来談経緯やクライエントの面接へのニーズを確認していくことから始まります。来談経緯を通してクライエントの文脈を共有することが、作業同盟の出発点にもなります。
作業同盟は、必ずしも固定的なものではありません。様々な要因を背景に作業同盟が作られたり、はじめは弱いと感じられた作業同盟が進展とともにしっかりと形成されていくようなこともあります。また、的確な抵抗の処理が同盟を育む大きな要因となることもあります。

関与しながらの観察(2018-44.2018(2)-44
面接場面をはじめとしたクライエント理解の場では、クライエントのことをセラピストから切り離して客観的に観察ができるという思い込みに注意をしなければいけません。
観察の場においては人間が人間を観察するのであり、完全に客観的な観察というものはあり得ず、必ず観察者が相手に影響を与えています。このことをサリヴァン(Sullivan,H.S.)は、「関与しながらの観察」として指摘しました。
互いが影響を受けながらも、互いの間に起きる現象は観察が可能であり、そこから治療的な関与も可能になるという考え方です。

ケースフォーミュレーション(2018-18,142
上記のような過程の中で得られた情報を分析してつなぎ合わせていくことで、一面的で平面的なクライエント像でなく、多面的で立体的なクライエント像を暫定的に描き出し、より適切な援助へつなげていきます。得られた情報を特定の手順や法則に落とし込んでクライエントの理解を進めることを、ケースフォーミュレーションと呼びます。
学派によって落とし込む手順や法則には様々なものがありますが、学派を超えた原則の一つとして、命のアセスメントが最優先であるというものが挙げられます。これは、自傷他害や虐待が守秘義務よりも優先されるということと関連しています。
また、身体面のアセスメントが精神面よりも優先されるというものも、これと関連したものとして挙げられるでしょう。生じている症状をすべて精神的なものに帰して考えるのではなく、精神的なものとして扱う場合には、まずは身体面からくる可能性を除外することが優先されます。
このような、面接を進めていく上での基礎の部分を評価した上で、知的機能・認知機能のアセスメント、病態水準・精神症状のアセスメント、パーソナリティ特性のアセスメントを重ねていきます。

<参考文献>

  • 一般社団法人日本心理研修センター(監修) 2019 公認心理師現任者講習テキスト 2019年版 金剛出版
  • 氏原寛・亀口賢治・成田善弘・東山紘久・山中康裕 2004 心理臨床大事典(改訂版) 培風館
  • 小此木啓吾(編) 2002 精神分析事典 岩崎学術出版社
  • 津川律子 2018 面接技術としての心理アセスメント 臨床実践の根幹として 金剛出版
  • 中島義明(他編) 1999 心理学辞典 有斐閣
  • 馬場禮子 1999 精神分析的心理療法の実践 クライエントに出会う前に 岩崎学術出版社
  • 妙木浩之 2010 初回面接入門-心理力動フォーミュレーション- 岩崎学術出版社
  • Peter,D.J.& Insoo,K.B(著) 桐田弘江・玉真慎子・住谷祐子(訳) 2010 解決のための面接技法-ソリューション・フォーカスト・アプローチの手引き-
  • Zaro,J. Barach,R. Nedelman,D.& Ereiblatt,I.(著) 森野礼一・倉光修・柴田淑子(訳) 1987 心理療法入門-初心者のためのガイド 誠信書房

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